【読書】日本のものづくりはMRJでよみがえる/杉山勝彦 希望に満ちた空へ
日本のものづくりを牽引して飛翔するMRJ
昨年初飛行を成功させた国産旅客機MRJ。
民間機として世界に羽ばたくのは半世紀ぶりになる。
初飛行は話題にもなり、ものづくり大国としての力を魅せつけたかのようであった。
だが、そもそもMRJは売れるのか、そして日本の航空機産業は成長できるのか。
MRJを起点に日本のものづくりにもメスを入れる本書。
世界を相手に戦う日本のものづくり。
電機業界とは違った未来を、航空機産業は見せてくれるのだろうか。
閉塞感漂う日本経済のなかから、希望に満ちた未来へ。
MRJの競争優位性は何か
「既存のライバル機に対し、MRJは燃費性能、乗客の居住性の2点について優位性を持つ」
燃費性能に関しては、JAXAとの共同研究などにより空力性能を向上させ、機体構造で5%、ファンとコンプレッサーの回転数を変えることが出来るGTFエンジンの導入により15%上回る。
居住性の面に関しては、リージョナルジェットでは珍しくエンジンをウイングマウントし、客室や収納スペースを確保した。
またシートもスリム化し、居住空間の広さを確保した。
リージョナル機の需要はどこに?
「北米大陸には、フィーダー線と呼ばれる航空網が張り巡らされている」
大きな空港同士をつなぐ中大型機ではなく、近距離の空港に小さな飛行機で移動するために使われる。
重視されるのは燃費の良さ。
需要の多くは北米市場であり、その割合は6割以上とされている。
急成長する航空機市場
「航空機全体の年間市場は概ね3600億ドル(40兆円)」
「2013年の運行機数は約2万機。これが今後20年年間で、35000~42000機へと、約2倍になるという」
LCCの台頭によりアジア圏での航空機需要が急増すると見込まれている。
そしてこれから新造される航空機は3万機と予想されている。
非常に魅力的かつ大きな市場であるのは間違いない。
レシプロ取引とは?
「沢山買ってくれることを期待してその国のメーカーに注文を出す」
航空機を買ってくれることを期待して、部品の注文を出すというのがレシプロ取引と呼ばれる。
かつてのボーイングと日本のエアラインの関係はまさにこれであった。
サプライヤーまで含めた駆け引きが航空機産業では行われる。
日本の製造業の特長は?
「製造業が、経済の構造変化に目を向けず、ボリュームゾーンだけを追い掛け過ぎてしまった」
多くの売上が見込めるボリュームゾーンを獲得するために、利益を圧縮するという舵の切り方をしてしまった。
政策全般がこのような高圧経済を助長する方向に向かっていたことも原因の一つである。
「日本は製造技術に優れている。というと聞こえはよいのだが、絶望的なまでに日本には製品技術がない。」
逆にアメリカは要素技術を組み合わせて市場が求める製品を作ることが得意だ。
品質の高さしか誇れないにも関わらず、ボリュームゾーンを得るために価格競争に参戦する。
果たしてそれは必要なのか?
求められている以上にオーバースペックではないのか?
需要よりも高すぎる性能を持つのであれば、それに見合った市場に移行することが必要なのだ。
高品質が評価される市場に。
「航空機産業を始めとする高品質イコール高付加価値となる産業分野に対してヒト、モノ、カネのリソースを重点的に投入すべきだろう」
日本の得意な高品質が求められる市場の一つが航空機産業である。
航空機産業ではコストの叩き合いよりも、性能や品質の高さがものを言う。
まさにうってつけの市場である。
「欧米のアビオニクス・メーカーは飛行制御や航法システムも含めたトータルパッケージを持っていることが強みだ」
日本はパッケージとしての技術をあまり持ち合わせていない。
MRJで実機経験を積み、パッケージ化して製品を売ることが高付加価値への第一歩である。
「楽しむ余裕がなければ、目の前の仕事をただこなすだけになり、新興国に簡単にキャッチアップされ、やがては低価格のコモディティ市場に飲み込まれてしまう」
仕事に対して楽しさを持つことこそがいい製品へと繋がる。
つまりは従業員が自分が満足できる仕事に付いていることが重要であり、
やりたくない仕事をやらされている場合は生産性が低くなる。
当たりまえの話だ。
経営者としての腕の見せ所は、いかに多くの従業員たちの希望を叶えてあげるかにかかっている。
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