【読書】ドローン・スクランブル/未須本有生 航空機事業の現場を描く元エンジニア
防衛省と大企業、そこにドローン技術を有するベンチャーが参戦する
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元航空機エンジニアであり、推定脅威で松本清張賞を受賞した著者が描く一作。
今、何かと話題なドローンを活用するべく動き回る彼ら。
それぞれに自分の思惑が見え隠れする。
エンジニアであった著者の、官に対する強い想いも感じる。
保身主義に凝り固まった動き方や考え。
大企業の中にもそれはもちろん有る。
特に航空機業界はそう。
一度の失敗でも、世間からのバッシングは激しいものが有る。
人の命を背負っている、防衛という微妙な問題を扱っている。
それらが一因では有る。
現場のリアルを描く著者の筆の強さに目を見張る。
そして官民の間の確執や、それによる国民への不利益。
一体どのようにしたら無くなるのだろうか。
考えさせられることは多い。
航空機は安全への目線が厳しい
「開発中に一度でも重大事故を起こせば、二度と新規開発の機会はないとさえ言われている」
それほどまでに保守的にならないといけないのかと思う業界。
確かにアメリカにおける試験設備は優れている。
周りに何もないような空軍基地があるからだ。
日本にはそれがない。
でも本当にそれだけなのだろうか。
リスクを取らずにリターンだけ欲しがるというスタンスではもう生き残れないのではないだろうか。
いつまでも下請け気質が抜けきらない
「与えられた指示に従って物を作るという点では、極めて優秀だと思うんだけど」
日本のメーカーのスタンスに対し、倉崎はこう述べる。
ゼロから何かを生み出すことを苦手とする日本のメーカー。
アメリカとは違って、リスクを取ることを積極的に推奨されていない。
一度失敗したら戻ってこれないような、減点評価。
挑戦したことに対しては評価されない。
ベンチャーの積極さを少しは見習う必要があるのだ。
正しいのはどこか、目指すべき方向はどっちか
「信頼性を第一に言及される方はほとんどいません」
部品メーカーの社長はこう言う。
今はコストばかりに目を向ける。
既存のものを改良する方向としては、技術を伸ばすか、価格を安くするか。
ガラパゴス化してしまった日本の製造業において、技術をこれ以上伸ばした所でその方向では先が見えている。
だからこそ、安易な価格競争に参入する。
技術の新たな活用を模索しようともしないで。
安易な発言は時として大きなダメージを残す
「世間への影響力がある人達はそれぞれに理解力があり判断力もあるが、自分達技術者から見ると早分かりしすぎる傾向がある」
物事の一側面しか見ていない人間は多い。
それは世間に対してなるべく早く、センセーショナルな情報を発信したいからかもしれない。
もしくは細部に興味がないかのどちらかであろう。
強い力で推し進めることは、場合によっては有効かもしれない。
凝り固まった業界に対しては特に。
具体化しなければ動かない、それが役人
「本当は災害自体が起こらない方がいいに決まってるんだけど、役人っていうのは目の前に具体的な事例が示されないと理解できないんだよ」
官の動きの悪さに対しての苦言。
欠けているのは想像力なのであろうか。
余計なことと切り捨てる思慮の浅さなのだろうか。
それとも、切迫した予算の中でやむを得なく切り捨てられるものなのだろうか。
短期的な結果だけを重視する民と、長期的な視点を考慮に入れなければならない官の体質の違いでもあるのかもしれない。
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