【読書】騙し絵の牙/塩田武士 本は読者のもんやで
小説のモデルは大泉洋
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罪の声の著者である塩田武士。
彼の最新刊は、やけにキャッチーなジャケットをしている。
そう、大泉洋がでかでかと載っているのだ。
なぜ彼がこんなにも前面に出ているかと言うと、この本は大泉洋をモデルにした社会派長編だからだ。
小説のモデルとなる俳優がいる。
そんな面白い試みに、ついつい惹かれてしまい手を取った。
大手出版社で雑誌編集長を務める早見。
ウィットに富んだ会話、リアリティのある行動、大泉洋が小説の中で飛び回っている。
彼が担当している雑誌に廃刊の噂が流れ始めた。
彼は自分の雑誌を守りきれるのか。
大いなる力に巻き込まれて、そして屈服してしまうのだろうか。
もがき苦しみながら立ち向かう彼の姿は我々に勇気を与えてくれる。
自分の使命と責任を果たす
「何があっても俺の雑誌を守ってみせる」
主人公の早見は雑誌の編集長である。
編集長は雑誌に対して全部の責任を負っているのだ。
その雑誌に廃刊の噂が流れる。
それに対し必死にもがき立ち向かう速水。
人が、自分の思いを曲げずにまっすぐに立ち向かうその姿勢は、読むものに勇気を与えてくれる。
お金はあくまで養分であり、根っこではない
「業界が投機筋の金をあてにする様になると、制作の質が落ちるのは必至。両刃の剣になります」
雑誌やアニメ業界、彼らは制作資金を集めるのに苦労している。
一方で、一つ当てれば大きなリターンが得られるのは分かっている。
そこに目をつけ投機筋は、世界中から集まってくる。
だが投機する人々の目的はあくまでリターンを最大化すること。
いい作品を作る商品を創る、それは二の次なのだ。
なぜなら金が儲かればそれでいいから。
本来は、そんな金だけ出している人間達に大きな顔などされてはいけない。
制作者の思いによって、素晴らしいものができる。
金はあくまでそれの養分でしかないのだ。
想いの強い人間達が作る。
その方が消費者にも伝わるのだろう。