【読書】ファーストエンジン/未須本有生 苦難を乗り越える技術者たちの物語
航空機メーカー出身の著者が描く日本初の超音速エンジンプロジェクトが始動する
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エンジン完成のため死力を尽くす技術者たちの熱い思いに感動し、涙し、そして奮い立たせられる物語だ。
エンジンメーカーで開発中の新型エンジン。
国産初のアフターバーナー付だ。
最後の燃焼試験を迎えたが、そこで爆発が生じ若手技術者が死亡した。
プロジェクトリーダーは左遷され、プロジェクトも実質的に凍結された。
原因を突き止めようとするプロジェクトのメンバーたち。
そして数々の妨害工作を乗り越えながら光を探す。
彼らの勇気に我々は力をもらう、そして誇りを見せつけられるのだ。
安定から離れることの怖さ
「リスクが少なく確実に利益が得られるライセンス生産は企業運営の安定という観点からは正しいかもしれない。そして往々にして人は楽な方へと流されるものだ」
航空機メーカーには二種類の仕事がある。
自社開発のものとライセンス生産のもの。
ライセンス生産は設計図を買ってきてそれを製造するだけ。
開発のリスクは追っていない。
一方、自社開発というのは開発にかかる全てのコストリスクを負担し、リターンは不確定である。
企業を守るためにどちらが優先されるのだろうか。
既存の枠組みからはみ出すことへの後押しができるか
「企業運営の常套句になっているコスト管理や作業の合理化は、未知のものを探る研究や新しいものを作る開発とは必ずしも相容れない」
元エンジニアの著者が経験したであろうこと。
それが非常に重たい言葉となって記されている。
安定と成長、それは相反するもの。
大企業が存在する、その意味をどこに見出すのか。
株主からの期待に応える、それだけではない。
企業としての理念を貫き通すこと。
それをどれだけの人間が分かってくれるのだろうか。