【読書】街場の共同体論/内田樹 共同体が消え去るのは比較の世界で生きているから
共同体はバラバラに、その原因はどこに
新品価格 |
現代日本における共同体の危機はいきなり天から降ってきたものではない。
何十年もかけて、我々日本人が作り出したもの。
共同体とはこのようにあるべきだ、という声に基づいた国民の努力の成果なのだ。
その仕組みが破綻し始めた昨今、それを補正するためにも同じぐらい時間がかかると思うべきなのだ。
正しいことを正しいという人が減ってきた
「当たり前のことが通じない世の中になりつつある」
著者は言う。
人々の発言がだんだんと非常識になっている。
上ずったような言葉が流布し、 万人がゼロサムゲームに乗せられている。
だからこそ敗者は自己責任だと。
そこでイライラしないでゆっくりと考えよう、そういう発言できる人間がいなくなってしまったのだ。
互いとの繋がりを断つことで生きていけるのだろうか
「お互いに迷惑をかけたりかけられたりしながら愉快に生きていく」
今の日本社会に足りないのは人に頼ること。
スタンドアローンで生きていくということはなかなか難しい。
だがそれがいつまでもつのだろうか疑問を呈する著者。
比較ではなく絶対値で
「人々は周りの人間が未熟で無知で使い物にならない人達であることを切望する」
人々は比較される社会の中で育った。
だからこそ自分は楽に、なおかつ良いポジションに着きたい。
そのためには周りが劣っていることが素晴らしいのだ。
だがそのシステム全体的におかしいのではないか。
そろそろ資本主義から脱却する必要があるのでは?
「周りを競争相手として排除していくような生き方をするより、集団全体のパフォーマンスを底上げする方が自己利益を安定的に確保できる」
今の資本主義では周りをいかに蹴落とすか、自分がいかに得をするかだけを考えて生きている。
もっと俯瞰的に、全体としてどうすべきかを考えなければいけないのではなかろうか。
パイを奪い合うだけでは意味がない。
新たにその斜め上へ進む、それこそ価値があることなのだ。