【読書】スリーパー/楡周平 本当の恐怖がこの社会を見舞うのはそれからだ
極めて現実感のあるスパイ小説
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題材の中には、アメリカ、中国、北朝鮮。
今の日本を取り巻くキーワードばかりが詰め込まれている。
本作の主役はCIAの秘密工作員である由良。
彼は日本人でありながらアメリカに尽くす。
彼が立ち向かうのは、テロリスト。
日本の米軍基地がテロの標的にされた。
それを食い止めようと権力と暴力を使う。
いかに日本が無力か、そしてなめられているか、高いリアリティの下で描かれる。
街は大きくなり、活気は薄れた
「街は確実に大きくなったが、活気がない。人の顔から生気というものが失せている」
久々に日本に降り立った由良はこう語る。
人々が閉塞感に包まれた国において、元気がない姿を憂う。
我々はバブルを知らない。
好景気というものを知らない。
だから虚ろな目をしたサラリーマンたちの顔しか知らないのだ。
どうしたらその意識が変わるのか。
資本主義の末路
「まるで焼き畑じゃありませんか」
先進国の企業が新興国に進出し、そこでの安い労働力を買い叩く。
そして労働者が裕福になってくると、そこを手放し次を探す。
お金しか見ていない、地域のこと労働者のことを考えていないのだ。
それが資本主義であり、世界はそれを基に動いている。
そろそろおかしいと思うべきなのではないだろうか。
人が幸せになるために企業があるのではないのだろうか。
仕事に対する責任感は倫理観と同じ方向を向いているべき
「不都合な真実には目を瞑り、最悪の事態など起こり得ないと考える」
先の震災でも明らかになってしまった日本のスタンス。
本質から目を背け、楽観視をする。
合議性は日本のいいところでもあり悪いところでもある。
なぜなら、誰が決めるのか、責任の所在を不明確にすることとの背中合わせだから。
なぜ、ニュースは直ぐにホットでなくなるのか
「圧倒的多数の日本人は、放射能のことにも震災のことにも、もはや無関心」
直ぐにニュースは報道をしなくなる。
それは国民が興味を失うかであろうか、それとも無関心にさせたいのか。
日々新しいことが起こり、その中には重要でないものとそうでないものがある。
その判断をすることすらできなくなってしまったのだろうか。
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