【読書】楽園のカンヴァス/原田マハ 夢を見ているように美しい絵でした
ルソーという画家に情熱を込めて向き合った彼らの生き様
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ニューヨーク近代美術館のキュレーター、ティムブラウンはスイスの大豪邸に突如招かれた。
そこで目にしたものは巨匠ルソーの名作「夢」に酷似した絵画。
持ち主は、絵の真贋判定を正しく行った者にその絵を譲ると言い出した。
ライバルは日本人研究者、早川織絵。
絵の裏側に見え隠れする、ルソーとピカソの物語。
ルソーとピカソ二人の天才がカンバスに何を込めたのか。
なぜこんなにも描写が細かく、そして専門的なのか。
それは著者の経歴を紐解けば明らかだ。
彼女は昔、キュレイターの仕事をしている。
実体験を伴った著者によって紡ぎ出された臨場感あふれる緊迫の勝負。
そして美術品に見せられた人間達。
彼らは夢を追い求める。
作品の背後に何があるか、作品の背景はどうなっているのか。
そこまで理解してこそ美術品がわかるということなのであろう。
一度のチャンスを逃してはならない
「美術品との出会いは偶然と慧眼に支配される」
美術品の収集家は往々にしてコレクターである。
彼らは作品を手に入れた後、自分の側から離したくない。
だからこそ有名な作品は出回るのが少ない。
下手をしたら一生、日の目を見ないこともある。
そんな中で突如現れたルソーの大作。
キュレーター達の熱い想いは止まらない。
偉大な画家の情熱を受け止めきれるか
「この作品には情熱がある。画家の情熱のすべてが」
ルソーとピカソがお互いを刺激し合い、作った作品。
己の情熱のすべてをぶちまけろ、とピカソはルソーに進言した。
世界を敵に回しても、自分を信じる。
自分の能力を信じる。
自分の行動を信じる。
それはもちろん難しい事。
しかしながら、そうしない限り新しい境地というものは開けない。
新たな一歩を踏み出すために彼は筆をとる。