【読書】神様の裏の顔/藤崎翔 裏を読めるか、騙されないで最後まで
信じていた心がふとした瞬間疑心暗鬼に陥る、そんな感覚を味わいたいか
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横溝正史ミステリー大賞受賞作。
だが、僕がこの本に惹かれたのはこの文章ではない。
道尾秀介氏、推薦。
その1文にやられてしまった、買ってしまった。
本作品の作者は元お笑い芸人らしい。
読み始めるとわかる奇妙な語り口、そしてスラスラ入ってくる文章。
不思議そして驚愕。
読み終わってからもう一度読みたい。
なぜなら私は騙されていたから。
本作は、お通夜を舞台にした小説である。
まずその設定に驚く。
話題の中心にいる人物は、他界した故人。
彼にまつわる人たちが集まっている。
そして皆、何かしら思うところを持っている。
彼らはふとした瞬間に出会い、お互いの情報を持ち寄り、そして何かが明らかになる。
その明らかになったもの、真実らしいと思われるもの。
それは神様の裏の顔。
皆から慕われていた彼、慕われていたことほどに裏の顔があったのではないかと。
物語は一転、急転直下。
最後に驚くのは誰だ。
僕は読者だと思っている。
善にも悪にも取れる言葉
「すまない私の力が足りなかったね」
この発言の真意はどこにあるのだろう。
助けることができなくてごめんねということなのではないのか。
人は一度、疑心暗鬼に陥ると、人を信じることができなくなる。
当初はいい人だと思っていた。
そんな相手であっても、ふと変わってしまった思いというものは、なかなか覆らない。
ほんの少しの先入観が命取りであったりする。
葬式は誰のために
「人は二度死ぬ。一度目は肉体が死んだ時。二度目は生きている人の心の中から消えた時」
お葬式というものは生きている人間のためにある。
彼らが故人を思い出し、そして強く生きていくために。
ではこの本のお通夜は誰のためにあるのだろうか。