【読書】怪人二十面相/江戸川乱歩 少年探偵団はコナンじゃない
言わずと知れた名作、怪人二十面相
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果たして、どれだけの人が読んだのだろうか。
そして魅力に酔いしれたのだろうか。
恥ずかしながら私は今まで読んだことが無かった。
ミステリは好きなのに、なぜか手付かず。
新潮文庫NEXで文庫化されたことを気に手に取った本作。
東京駅を背景にした魅力的な表紙のイラストも一因と言える。
二十面相は現代のミステリの多くの根幹を創っているとも言えるかもしれない。
泥棒に対する見方、ヒーローが二人、心理戦。
現代の複雑怪奇なミステリも面白いが、原点に立ち返るとまた新たな魅力を発見できるかもしれない。
怪人二十面相はヒーローである
「二十面相という奴は、人間ではなくて、えたいの知れないお化です」
怪人二十面相の凄さを表した一小節。
ことごとく人の考えの裏側をつく二十面相。
読者も一緒になって騙される。
少しの違和感を感じながらも読み進めるとたいていそこにヒントが隠されている。
変装の名人であるだけでなく、他人の心理を読むことに長けている人間だ。
ひたすら好き放題やられる小林少年、そして読者たち。
憎たらしいほどの自信に満ちた名探偵
「君も知っているだろう。僕が一度だって失敗したことがあったかい・・・」
名探偵、明智小五郎の登場だ。
助手である小林少年に向かって心配するなと声をかける。
そしてその裏側に見えるぶれない自信。
明智も相手の心理を読むことにおいて右に出るものはいない。
彼等の心理戦に魅入って、ページをめくる手が止まらない。
乱歩が示す正義と悪の狭間
「乱歩が用意したさまざまなモチーフは、学校が推奨する正しさとかよさの対極にあるものだ」
解説を書く辻村深月のことば。
乱歩は、日常生活とは全く異なった価値観を与えてくれる。
怪人二十面相は悪人である。
だが、なぜか応援したくなる魅力というものを持っている。
勧善懲悪な物語が多くを占めるなかで、必ずしも悪=カッコ悪いとはならないのだ。
正義と悪。
完全なものなど何もなく、その間で右往左往しながら、どちらに転ぶかわからない。
そういった示唆を与えてくれているのではないだろうか。
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