【読書】みかづき/森絵都 塾と学校、それらは太陽と月である
塾と学校の関係という大きなものに立ち向かった家族の物語
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学校は無償のもの、塾は有償のもの。
もちろん利益を求めなければならない。
その狭間に落ちている生徒はいないのだろうか。
塾と学校、それらは太陽と月である。
だがそれらが歩み寄らない限り、あいだに落ちる人間というものを失くすことができない。
営利企業の限界というものをまじまじと見せつけられる1冊。
働くからには楽しく、そして自分の信念を貫き通すことの大切さを学ぶ。
親子三代の物語。
積極的に引っ張る女性達とそれに引っ張られながらも自分の信念は曲げない男性たちの物語。
ひたすら利益を追求する、それが正しいと規定された今の現代社会ではある程度仕方のないものかもしれない。
しかしながら、それをあるがまま受け入れ、立ち向かわないということが思考停止に過ぎないのかもしれない。
せっかく今の時代に生きているのであれば何か自分の信念を貫く。
そして、世界を変えてみせるという気概を持ってもいいのではないだろうか。
常に満ち足りることのない三日月のように、満月になりたいと上を向いて光り輝く我々でありたいものだ。
考えさせるゆとりを与えたい
「子どもたちが自ら答えを導きだすまで、あなたはよけいな口出しをせずにじっと待つことができる」
吾郎は何故、子どもたちの力を発揮させることができるのか。
それは子どもたちに考えさせるからだ。
闇雲に教えるだけではなく、考える時間を与える。
飲み込む時間を、猶予を与えてくれる。
時間に追われた毎日の中で我々はどれだけゆとりを持てるだろうか。
考えることがロボットとの差別化の源泉
「誰の言葉にも惑わされずに、自分の頭で考えつづけるんだ」
生きるために必要なのは学力ではなく、考える力。
それらは似て非なるもの。
暗記だけではない、ただの暗記だけでは勝てないのだ。
ロボットにも、自分にも。
当事者として立ち上がってみろ
「世の中のよくないところを見つけたんなら、今度は自分の番だって、しゃっきり立ちあがんなさいよ」
本作で一番響いた言葉がこれだ。
よくないところを見つけたのなら自分でなんとかしてみなさいと、立ち上がってみなさいと。
横柄な言葉遣いではあるものの、その中身はしっかりと、そしてど真ん中に突き刺さる。
無関心な若者たちと呼ばれた今だからこそ、突き刺さる。