aichikenminの書斎

20代サラリーマンが、読んだ本と、心に残った言葉、その時考えたことを徒然なるままに書き留めたもの(金融、理系、工学、航空機、読書)

【読書】百舌の叫ぶ夜/逢坂剛 人気ドラマMOZUの原作

世界の裏側は広く、そして恐ろしい

百舌の叫ぶ夜 (百舌シリーズ) (集英社文庫)

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能登半島の岬で記憶喪失の男が発見される。
彼は、妹と名乗る男によって新谷和彦と確認される。
 
その頃、東京では爆弾事件が発生。
倉木警部の妻が巻き添えとなり死亡する。
 
また、テロリストである新谷を尾行していた明星警部は別の思惑を有していた。
 
警察と公安、そしてテロリスト。
物語が進むにつれ、三者が複雑に絡み合った関係をみせる。
 
裏の世界のつながりとそれが見え隠れする際の人の浅ましさ。
恐いのは誰か、恐いのは何か。
人は何を恐れているのだろうか。
そして何を信じればいいのだろうか。
 
見ている視野が徐々に広がり、何度も反転する。
真実はどこにあるか。
違和感はどこにあるか。
最後まで手を止めることができない。
 
エンターテイメントとしてのどんでん返しというものは、二種類ある。
一つは、同じ視点で、同じ高さであるものの、つながりが見えておらず、
それが明らかになることで見え方が変わるもの。
そして、二つ目は視点がより俯瞰になることで世界が変わるもの。
本作は後者、徐々に視点が引き、全体像が明らかになる。
世界は広い、そして恐ろしい。

人に囲まれた孤独

「この世の中に、知っている人間がただの一人もいないことを思い知るのは、考えた以上につらいことだった」
新谷は記憶を失っている。
自分は誰一人、知らない。
相手は自分のことを知っているが、彼は見覚えがない。
本当の孤独というものは、周りに人がいるにも関わらず、苛まれるものなのだ。
 

 

尺度の違いはあって当然

「ご自分の尺度で他人を判断されては困りますな」
人は各々、自分の尺度を持っている。
それは無条件に他人とは一致しない。
しかしながら、時として人はその事実を忘れてしまう。
人との関係の間で、俯瞰的な視点を持っていなければならない。
それを持つことこそが人といい関係を保つ秘訣かもしれない。
 

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