【読書】森に眠る魚/角田光代 母親たちの孤独、現代人の孤独を描く
「人のことは気にしないと決めたのだ」
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アメトークで紹介され、話題沸騰の本作。
物語は5人のママ友たちを中心に進む。
それは狭い世界。
子供が同じような年頃だからといって仲良くなる。
それがママ友。
本来であれば薄い、薄っぺらい関係のはず。
だが、その環からはみ出せば即座に大変なことになってしまう。
なぜだろうか。
排斥、孤独、仲間意識、繋がり。
人は共通の敵を作ることで仲間になることができる。
すぐに人を疑ってしまう。
なぜだろうか。
なぜ人を信じることができないか。
自分が信じていないから、相手も自分のことを信じていないのだと。
そう思ってしまうのだ。
そして、これはママ友だけの話ではない。
我々の中に潜んでいる狂気がこの本には描かれている。
他人事ではない、まさに自分自身。
あなた自身はどこにあるか
「ママ友なんて一時的なつながりでもない、もっと長いつきあいができるのではないか。だれかの母とか、だれかの妻ではなく、自分自身として」
カテゴライズした自分ではなく、名目を取っ払った自分自身には何が残るか。
社会の中で与えられた役割ではなく、自分自身として。
全てを取り払えば何があらわれるだろうか。
普通という幻想
「他人と比べることで人は不要な不幸を背負いこむ」
他人の子供、他人の生活。
自分のものを比較して一喜一憂する。
いつの間にか人間は比較級でしか生きられなくなってしまった。
人それぞれの価値観ではなく、「普通」という見えない力によって操られるかのごとく。
時には俯瞰する勇気
「私、いったい何がほしかったんだろう」
都会に引越し、背伸びした生活を送り、その結果何が残ったか。
彼女はふと我に返る。
何のために?誰のために?
そして気づく。
周りに合わせ、流され、巻かれてしまっていたことに。
ルーティンから逃れるための勇気ととどまる気楽さ
「頑強なまでのくり返しに疑問を持ちさえしなければ、日々がこちらをふり落とすこともしないと、彼女はすでに知っている」
ルーティンにのってしまえば簡単なのだ。
生きていくことすら、ルーティンになる。
あえてそこから抜け出そうとさえしなければ。
何も変わらないが、いつも通りの一日が始まる。
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