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【読書】民王/池井戸潤 政治とは何かを正面から問う小説

政治エンタメ小説たる本作は痛快なことこの上なし

民王 (文春文庫)

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主人公は総理とその息子。

息子はもちろんバカ息子。

しかしながら、自分の主張はきちんと持っている。

総理は堅物、そして昔は国民のため、日本のためと言っていながら、今は保身ばかりを考える。

 

漢字の読めない政治家、酔っぱらい大臣、揚げ足取りのマスコミ。

彼らが織りなすエンターテインメント。

 

本作にはSF調の仕掛けが施されてはいるが、それ以外は純粋な社会派。

何が正しくて、何が間違っているのか。

政治の本質はどこにあるのか。

期待の持てるリーダーが出てくるのと同時に、国政に興味を持つ国民が増えることを祈りながら読みたい一冊。

政治家とは尊敬されうる職業なのだ 

「政治家っていうのは、本来立派な仕事なんじゃないの」

政治家を立派じゃなくしている原因は何か。

それは二世議員なんではないかと登場人物は言う。

そもそも自分の信念を持っているから政治の世界に飛び込むのであって、

親が政治家だからという世襲制に誰がしてしまったのだろうか。

利権や既得権益を度外視して、良い主張をしてくれる人間は現れるのだろうか。

 

政治家というビジネスモデル

「難しい政策作りを官僚にやらせたのは、政治家っちゅう家業を自分のアホ息子に継がせるために戦後政治家がつくったある種のビジネスモデルやな」

政治家という仕組みをこう批難する。

表に立つのは誰でも良い。

後ろ側で政策を作る人間がちゃんとさえしていればいいのだから。

会社の経営のようにしっかりと株主がチェックすればいいのだが、それをする有権者が少ない。

 

政治家とは信念がなければ務まる職業ではない

「地盤があるから立候補するってもんじゃねえだろ」

バカ息子はこう言う。

政治家が世襲を考えた時点でそこが限界なんだと切り捨てる。

まっとうな話、だがそれがまっとうではない世界が政界なのかもしれない。

自分たちの考える常識が世間一般に受け入れられる常識なのか、しっかりと考え

なければいけない。

 

 

物事の本質はどこにあるのか、それを見る目を閉ざしていないか

「あなた方の発想はあまりにも固定的すぎませんか」

目先の利益を追求するがあまり、本質を忘れてしまった彼ら。

見ていると非常につらいものがある。

なぜならそれは社会人の多くが感じることだから。

何のために仕事をするのか、目先の性もない目標によって曲げられてしまっていないだろうか。

 

若気の至りの何が悪いのか

「青臭くて、がむしゃらで、そして本気で世の中のためになろうといきがっていた」

いきがっていることは良いことだ。

人は夢を、理想を抱いていることが大事である。

それを忘れてしまい、心が無くなったマシーンのように働く姿は見ていてもつらい。

がむしゃらに突き進む姿を忘れずに、日々仕事をしたいものだ。

 

利己主義だけではもったいない

「世のため人のために、使うのも素敵だなって。お金って本来、そういうものかも知れないなって」

お金は何のためにあるのか。

自分が贅沢するのは一部でしかない。

それをつかって何か社会の役に立つことができるかもしれない。

仕事で社会の役に立つのは限界がある。

それ以外の面でも、社会に貢献しようと思えるならば、お金の一つの使いみちにもなるかもしれない。

 

青臭い理想を守って育ててあげるのがおっさんたちの仕事だ

「理想論すら語らない若者はもっと質が悪い」

理想を掲げることすらできない人間はいないと思うが、それをいかに持ち続けるかが重要だ。

理想論を語っているとときには、もっと現実を見ろと言われることもある。

そんな人に潰されてはいけない。

自分の持っている信念を考え直す必要はあるかもしれないが、捨て去る必要など全くない。

捨て去ってしまったらその人間と同レベルにまで落ち込むのだから。

 

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