aichikenminの書斎

20代サラリーマンが、読んだ本と、心に残った言葉、その時考えたことを徒然なるままに書き留めたもの(金融、理系、工学、航空機、読書)

【読書】言の葉の庭/新海誠 また会うかもね。もしかしたら。雨が降ったら。

雨の平日、新宿御苑。出会う二人、悩みを抱えて。

新海誠の劇場アニメーション作品、言の葉の庭の小説版。

監督である新海誠がみずから小説化している本作。

小説 言の葉の庭 (角川文庫)

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劇場版にはなかった物語がふんだんに盛り込まれている

登場人物それぞれの背景が加えられ、劇場版では少ししか出てこなかった人にも焦点があたっている。

 

高校生、孝雄は雨の日の午前中、学校をサボって国定公園でデザインを描く。

そこに謎の女性、雪野が現れるようになる。

名前も知らない年上の彼女に、孝雄は惹かれていく。

過去に囚われながら、手探りしながら未来に歩みを進める孝雄。

夢、恋愛、憧れ、葛藤といった少し大人びた高校生の内面が美しく描かれる。

 

 

また、雪野にも様々抱えているものがある。

通勤途中で、足が止まってしまい、出勤することができない。

助けの手を差し伸べてくれる人もいない。

 

雨の新宿御苑の東屋で、そんな二人の繋がりが生まれた。

 

劇場版では少ししか登場しなかった孝雄の母親、兄。

そして、学校の先生や生徒といった関係する人物の物語も加えられており、

孝雄と雪野の生い立ちはもちろん、物語全体に厚みが増している。

 

この本を読むと、雨が降ったら新宿御苑に行きたくなる

新宿御苑で読むのもいいかもしれない。

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人はみんなどこかおかしい

「どうせ人間なんて、みんなどっかちょっとずつおかしいんだから」

公園でビールを飲みながら、鞄から大量のチョコレートを取り出したときの雪野のセリフ。

その行動自体を言っているのではない、自分の心に秘めた悩みから出た言葉でもある。

自分だけがおかしいわけじゃない、みんなどこか違うのだから。

 

「人間は正しさによってではなく、感情によって動く」

すべてがすべて論理的に行動するわけではない。

感情論が大きい。

本当に大事なことは、理屈ではなく、自分がどう思うかなのだろう。

 

「人生をサバイブするには同調圧力と戦わなければならない」

人は群れる。

群れの中にいると同調圧力という目に見えない力が働く。

特に群れの中にいることを強制された場合、同調圧力に逆らうことは難しい。

学校という群れは離れることを許されない空気がある。

本作の相澤祥子もそう、苦しんでいる。

 

群れから離れることを異端視するのは日本独自のものなのだろうか

学校や会社から離れることをタブー視する、最近は多少自由になってきてはいるが。

そもそもその群れがどういう成り立ちで生まれているのかを考えれば、異端でも何でもなかろう。

同じ年に生まれたというだけでくくられる学校。

同じ会社から給料をもらっているだけの会社。

どちらも大した繋がりのある群れではない、生死をともにするような群れではないのだ。

 

夢に向かって歩くということ

「十代だろうが二十代だろうが、あるいは五十になってからだろうが、
きっと生活は区切りなく続いていき、夢だの目標だのも常に形を変えつつ傍らに在り続けるのだろう」

夢を持っているのは、若者だけではない。

常に皆、夢や目標を持ち続けて生きていく。

ずっと同じものであることは稀だが、何かしら形を変えても軸は変わらずそこにあるもの。

 

夢を持っていない人間にはなりたくない。

例えば、お金を稼ぐことを目標にするというような。

いつでも、どんな時も、前を向くためには、チェックポイントやゴールが見えていることが必要だ。

 

「私ね、上手く歩けなくなっちゃったの。いつの間にか」

雪野が孝雄に初めて漏らす本音。

自分では真っ直ぐに歩いているつもりが、いつの間にか周囲から邪魔をされるようになる。

人は一人で歩くのではない、一人では歩くことができない。

 

偶然や不運が重なって、心が折れてしまうこともある。

そんなときに支えてくれるのは、やはり人なのだろう。

一言なにか声をかけるだけで変わるかもしれない。

手を差し伸べることができるかもしれない。

高校の部活の部室のような、気軽に集まれる温かい場所。

そういう場所が今、必要なのではないだろうか

 

「本当に心の底からなにかを創りたい人は、誰かになにかを訊いたり言ったりする前に、もう創ってるんだ」

これはいい、本当にいい言葉だ。

人に助言を求めるのは、背中を押してほしいから。

背中を押される前に行動できる人間は珍しい。

迷わず進める人に憧れる。

そんな人を応援したいし、自分も見習いたい。

 

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