【読書】東のエデン/神山健治 100億やるから閉塞感に包まれた日本を助けてみろ
100億やるから閉塞感に包まれた日本を助けてみろ
話題となったアニメである東のエデンの小説版。
神山健治監督が小説化した本作。
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100億円で日本を救え。
そういってあらゆる願いを叶える携帯電話と100億円を託された12人。
彼らはセレソンと呼ばれる。
セレソン同士は互いにライバル関係にあり、また共闘しているものもいる。
日本を救うことが目的。
手段はそれぞれのセレソンごとに異なる。
自分の考える手段で日本を救うために動く。
それぞれの人間に考えがあり、それの実現のために動いている。
陰鬱で閉塞感のある日本からの脱却を計るために、彼らは何ができるだろうか。
このテーマは今の現代社会を憂いているのだと思う。
どうやったら日本は前を向けるのか、それを読者に考えてみなさいと、そういう問いかけをしているのではないだろうか。
100億円という途方もない金銭を与えられたら、あなたなら何ができますか。
真剣に日本のことを考えてみなさいよ。
そう言われている気がする一冊。
日本を包む閉塞感
「日本に元気がないのは、日本人が夢から放り出されてしまったからかもしれない」
ヒロインがニューヨークの楽しそうに生きている人々を見た時の言葉。
アメリカに住んでいる人々は、一瞬一瞬の短い夢に生きているように見えたとも言っている。
それは、どういうことだろうか。
きっと彼らが楽しそうに、前向きに生きているからだろう。
今の日本は前向きという言葉がそぐわない。
マイナス面ばかりが目につく。
高度経済成長期においては、がんばった分だけ見返りがある。
それを糧に更に頑張るという好循環が生まれている。
今は逆。どうせ頑張っても無駄なのだからという空気が多くをしめている。
ここからいかにして我々は脱却できるのか。
「あなたたち若い世代こそが社会の主人公ですっていうくせに、
実際は、私たちを使って自分たちだけうまくやっていこうとしているんじゃないかって思えてきて」
会社に入ると、こういった印象を持つことがある。
会社が欲しがっているのは、要求通りに動く駒であって、我々はそこにはめ込まれるだけではないのかと。
駒であるという意識は、支配されているというイメージに繋がり、自分が生きていくために、労働力を提供し続けなければならないという負のスパイラルを呼び起こす。
能動的な行動と、受動的な行動により全ては変わる。
世界が反転するのだ。
「既得権にしがみつく老害と怠け者ー双方を排除してからの方が早いのかもしれない」
既存のものを変えるのは、非常に労力がいる。
ならば既存のものをすべて壊して、ゼロから作り出したほうがいいだろうという話。
本作において、これは極論であるが、ニュアンスは非常に良くわかる。
大きな組織の中では、既得権益が重要視される。
そして前例踏襲という思考停止。
これを踏み越えるには、調整という無駄な力が求められる。
悪しき風習は壊すべきもの。
改革を恐れてはいけない。
「この国は頭のいい連中がいっぱいいんのに、アイディアを実現するための損な役回りやる奴がいないんだ」
日本には実行力が欠けている。
先述の既得権に対して立ち向かう泥臭い役回りを誰もやりたがらない。
気持ちはわかる、事なかれ主義でいたほうが楽だから。
そこまで頑張りたくないから。
希望が持てないから。
泥臭くても頑張り続けるためには、すがりつく希望が必要。
逆に言えば、現代においては、希望の与え方が不十分なのだ。
脱閉塞感、求められることは何か
「今、日本で大切なのは、国民の一人一人が被害者にならず、
加害者にならず、傍観者にならないためのモラルではないだろうか」
傍観者にならない、このフレーズがささった。
例えば政治に対する興味でもそう。投票率が低いのもそう。
メディアに踊らされて、自分たちで判断しようとしないのもそう。
すべて、自分は傍観者であると思っていることに起因する。
主体的に学ぶためにも、政治に対する教育が求められる。
「役立たずなのにも関わらず、権利だけはぬけぬけと主張する」
こうはなりたくない。
自分を客観的に評価することができるか。
自分の立ち位置を理解しているか、何が求められているか。
主体性を持ちながらも、外から客観的に見る姿勢を崩してはならない。
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