【読書】イノセント・デイズ/早見和真 少女はなぜ死刑囚になったのか
死刑宣告、そこから始まる物語
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この小説は、主人公である女性が死刑宣告を受ける場面からスタートする。
何と言う始まりだろう。
そして、これから何が語られていくのだろうか。
読者は驚きとともにページをめくる。
元恋人の家に放火し、妻と双子の子供を殺めた罪で彼女は死刑宣告された。
その背景に何があったのか。
彼女に関係する人々の追想から紡ぎ出される物語。
現実の彼女とかけ離れた世間の声とイメージ、そして真実。
幼馴染や友人達は再審を求めて奔走する。
しかし彼女が望んでいるものは一体何だろうか。
彼女は弱い、だが、強いのだ。
生きる意味を与えられること
「私に言えることがあるとすれば、たった一人からでも大きな愛を受けていれば 子供は道を踏み外さないということだ」
彼女を取り上げた産婦人科医の言葉。
子供はどうやって生きていくか。
それは周りからの愛情によって作られていく。
その愛の数が多い、少ないではない。
一人でもいいから、愛する人がいてくれれば良いのだ。
その人を糧に、その人のために、自分が生きていけるのだと言うことを認識できるから。
自分は何のために生きているのか、その座標を与えてくれるのだ。
人の思いをすくい上げる人間になれ
「人間というのはなかなか複雑な生き物でな。持っていることを何でも口にできるというわけじゃない」
彼女の幼馴染、翔。
彼も彼女のために動いている。
彼の原動力には彼女への思い、そして父親と祖父からの思いもあった。
人はいろんな思いを抱えながら生きている。
簡単にそれを言語化できる人間もいれば、そうじゃない人もいる。
それらをすくい上げる人間になりなさい。
過去の後悔から彼は脱却したい、その時の後悔を再び繰り返してはいけないのだ。
懸命に死のうとする彼女
「彼女が死ぬために生きようとする姿を、この目に焼き付けなければならなかった」
彼女は死刑を望んでいるのだ。
誰にも必要とされないからこそ、誰かに殺して欲しい。
自分では死にきれなかったのだから。
そしてそのタイムリミットが迫ってきた時、彼女は全力で立ち向かう。
何に対して立ち向かうのか、それは問題ではない。
今まで流されてきた彼女が、自分の足で立とうとする姿を、目に焼き付けなければならない。