【読書】長い長い殺人/宮部みゆき 殺人事件の顛末を財布が語る
財布はいつも見ている我々の一番近い所で
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主役は財布。
財布たちが語る1つの事件に関する物語たち。
はじまりはひき逃げであった。
それが実は殺人事件だった。
被害者は男性、疑わしいのはその妻。
夫を引いた人物がどうなったのか、それを一度も聞こうとしないのだ。
しかも、夫には8000万円の生命保険がかけられていた。
しかし妻にはアリバイがある。
果たして犯人は誰なのか。
刑事でもなく、犯人でもなく、彼らの財布が語る物語。
全部で10個の財布が物語の語り手となる。
刑事の財布、探偵の財布、目撃者の財布、そして死者の財布。
最後には犯人の財布まで出てくる。
ここまで不思議な ミステリーはなかなかない。
なぜ財布に語らせるのだろうか、宮部はこう語る。
「財布はその人の一番近くにいる。」
自己顕示欲の強い犯人と、人の心を操るのに長けている人間。
世の中の闇は深い。
理解のできない人間はいる
「自分の方が本当はもっともっとずっと偉いんだと思い込んでいる人間」
世間には色んな人間がいる。
目立つ人間、目立たない人間、自己顕示欲の強い人間。
怖いのは 自分が偉いと思っている人間、自分が凄いと思っている人間。
彼らは羨ましさと盲目さで成り立っている。
どちらかが臨界点に達したとき、誰も予想しない行動をする。
事件は長い、だが、諦めなければ光は見える
「彼らはそうやって長い長い間歩き続けた」
物語の根幹には刑事と探偵、そして少年が関わっている。
彼らは別々の道を歩みながら、これらの事件によって結びついた。
同じ事件を違う視点から追う。
それほどまでに長い事件なのだ。
総勢10人、というか10個の財布。
彼らが 全員で語り終えた物語は、複雑でドロドロしていた。
財布はいつでも見ている、我々の一番近い所から。