aichikenminの書斎

20代サラリーマンが、読んだ本と、心に残った言葉、その時考えたことを徒然なるままに書き留めたもの(金融、理系、工学、航空機、読書)

【読書】タウになるまで待って/森博嗣 真実とは存在するのか?

見え方、立ち位置、それらにより真実は形を変える

τになるまで待って PLEASE STAY UNTIL τ Gシリーズ (講談社文庫)

森に立つ洋館、名前は伽羅離館。
この屋敷に探偵、赤柳と山吹、加部谷らが訪れる。
その建物は超能力者、神居の別荘である。
突然鳴り響く雷鳴、豪華な晩餐の後、密室で館の主が殺された。
死ぬ直前に聞いていたラジオドラマ、その名前はΤになるまで待って
あかないドア、通じない電話。
完全なる密室の中で殺された主。

 

密室の謎解きもさることながら、本作には真賀田四季も絡んでくる。
もちろん西之園と犀川も一緒だ。
探偵の赤柳もどうやら真賀田四季を追っている模様。
あの天才はどこで現れるのか、今何をしているのか。
物語への登場が待たれる。
物語の中には相変わらずトリッキーな哲学が入っている。
何作読んでもドキドキさせられるものだ。

物事は見方により姿を変える 

「ちょっとした 仕掛けのマジックを見せて超能力だと信じ込ませる。そうやって信者を集めるのだ」
加部谷は考える。
超能力者は見る角度によって胡散臭くなる。
信じれば本物だと思えるし、疑えば偽物だと思う。
物事は二律背反。
自分がどちらの側に立っているか、その時間によって最終的な結論も変わってしまう。
願わくば自分の立ち位置と、そこに含まれている主観を見極める能力を持つこと。
 

 

社会性と言う名の拘束

「一人でいる時には能力を確認することはできません」
子供の時は数々の能力を誰もが持っている。
自覚することはできるが、他人から見ればそれは単なる一人遊びである。
大人になるにつれて自分を徐々に修正し、そして皆と共通する感覚を持つことを強制される。
それが大人になるということ。
 

思考を拡張するためには、知識が必要だ

「思考というのは既に知っていることによって限定され、不自由になる」
自分の考えは知らず知らずのうちに、自分の知っている範疇に引きずり込もうとする。
自分が知っていることに寄せてくるのだ。
だからこそ自分の知っていることを増やさなければならない。
そうすることによって思考の拡張性を高めるのだ。
 

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