【読書】シータは遊んでくれたよ/森博嗣 私的な指摘さえも詩的。時に魔的。不敵に知的、無敵で素敵。
ギリシャ文字θにまつわる連続殺人事件、その影には・・・
θは遊んでくれたよ ANOTHER PLAYMATE θ (講談社文庫) 新品価格 |
マンションから転落死した男性の額に描かれていたθという文字。
一ヶ月後、今度は手のひらに赤いθが書かれた女性の死体が見つかる。
θ、それはギリシャ文字の一つであり、主に角度を表す。
ギリシャ文字にまつわるこのGシリーズ。
相も変わらず魅力的な物語。
登場人物が巻き起こす推理合戦、そして哲学とコメディ。
彼らの魅力に魅了されながら、一気読み間違いなし。
人間の思考は飛躍する、飛躍こそが神秘
「直面している問題のために回してやると、すぐには止まらず、ずっとさきの問題を 突然思いついたりするのかもしれない」
回すもの、それは頭のことである。
物事を考えていると、徐々に思考は飛躍する。
目の前の問題から遠く離れたところまで飛んでいく。
それをやめたいのだが、妨げたくない。
遠くまで思考を飛翔させることこそが考える源泉なのだから。
言葉は前後関係を踏まえて受け止めなければならない
「生きる行為は少なからず面倒だ」
森博嗣の文章には時としてブラックな言葉が入っている。
この言葉も 周りの流れをしっかり読めば、すっと入ってくる。
一つを単独で取り出すと刺激的な文章にもなる。
切り取るという作業は非常に難しい。
メディアにも同じことが言えるのだろう。
それをわきまえて受け止めることが必要なのだ。
常に反対されることを考え、強固な地盤を建設する
「戦場に一人の敵も存在しなくなるや否や教える者も学ぶ者も共にその持ち場で眠りはじめるのである」
批判されてこそ立ち向かう、ロジックを考える。
批判されることで、考えを深めるという行為が出来るのである。
無風状態ではそれは起こり得ない。
反対勢力がいるということは、それに立ち向かう力を要求される。
逆に言えば、それがない限り自分でエンジンを回さなければならないのだから。
重心はバランスを取る点だ
海月が重心という表現を使った。「バランスが取れる唯一の点という意味で使いました」
彼が持っている情報をもとに推理した、その結果が重心であると。
面白い表現、そしてシックリと、確信をつく、さすが森博嗣。