【読書】旅のラゴス/筒井康隆 一度まっさらになった世界において、文明は再び旅を始める
ラゴスは旅をする。北から南へ、そして南から北へ。
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集団転移、壁抜けなどの超能力を有する世界で彼は旅を続ける。
捕まって奴隷になっても、王様になっても彼は旅を続ける。
この世界は、便利な科学技術を失った代わりに、超能力を有することになった。
失った技術をまとめた本をラゴスは発見する。
だが、彼はすべてを再構築しようとはしない。
本来あるべきもの、今の世界には早過ぎるもの、重要過ぎるもの。
それらのバランスを考えながら彼は技術を復活させる。
一度まっさらになった世界において、文明は再び旅を始める。
ラゴスの旅と世界の旅、両方の物語である。
現代社会はお金に対する過度な依存でできている
「どのような取引であろうと、金を払った方が精神的優位に立つのだ」
現代の消費社会を体現するような言葉。
お金を払って商品を買う中で、人は匿名の消費者になり、横柄な態度を取ること多い。
お金という自分たちの取り決めの中でしか働かないものに頼りきってしまうことで、人は何か大事なものを失ってはいないだろうか。
物事の本質や価値をお金以外の尺度で判断できなくなってはいないだろうか。
長期的な目標をいかに維持できるか
「旅をすることがおれの人生にあたえられた役目なんだ」
人生の役目とはなんだろう。
何れ人は死ぬ、それまでの過程が人生なのだろうか。
人生を終える直前に、自分が満足できたと思うこと。
そのために、いま自分が何をすべきなのか。
人生と旅は同じ、方向を選ぶのは自分次第。
ものが便利になるにつれ、人間は能力を失っていく
「すべて機械の手助けがなければなし得ぬことばかり」
パソコンがなければ仕事ができない。
パソコンを使う仕事はできるけど、パソコンを作る仕事はできない。
機械に依存しすぎ、各人の仕事が細分化されすぎているため、機械がなければ何もできない。
ラゴスの旅する世界は、その機械がなくなり、文明が滅びてしまった。
現代社会に生きる我々への警鐘として捉えることもできる。
あまりに便利過ぎる世界は必要なのだろうか。
沢山の人と出会えるようになったが、身近な人との触れ合いを疎かにしてはいないだろうか。
文明とは選択の結果
「厖大な歴史の時間に比べればおれの一生の時間など焦ろうが怠けようがどうせ微々たるものに過ぎない」
文明の歴史は長く、そして膨大である。
その中で、人々は様々な選択をし、その結果として現在がある。
どれか一つでも選択が違っていれば、現在の形は無いのかもしれない。
これからの選択を間違えないためにも、我々は文明に対して考えを持たなければならない。
人生の旅の目的は人それぞれ、優劣はない
「旅の目的はなんであってもよかったのかもしれない。」
人は何のために旅をするのか。
つねに成長を求めるために旅をするのか。
その成長の結果として何をえられるのだろうか。
何かに急かされるように、その場にとどまることができないようになっているのだろうか。
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