【読書】真夏の方程式/東野圭吾 庇うもの、庇われるもの
湯川が少年とともに考える難題
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本作も主人公は物理学者の湯川。
彼は玻璃ヶ浦という自然に囲まれた場所で夏休みを過ごすことになった小学生と出会う。
そして同じ宿に泊まっていた元刑事が死体で見つかる。
被害者は昔、玻璃ヶ浦に関係のある人物を逮捕していたことが判明する。
彼は何のために玻璃ヶ浦を訪れたのか、そして事故ではないのか。
湯川は事件の全体像を掴み、珍しく捜査状況を聞きたがる。
彼がのめり込む理由とは、そして裏側にある絡みあった真実と守りたいものとは。
容疑者Xでは犯人を庇う人間に焦点を当てていた。
本作は、庇われる側に焦点を当てた、悲しい物語。
「誰もが興味を抱きつつ、殆どの者が何も知らない」
綺麗な海が自慢の玻璃ヶ浦で、海底資源の採掘を行おうとする。
そこに住む住民たちは反対し、採掘を行なう側は十分に自然に配慮するという。
興味深い話であるが、漫然としか皆理解していないのだ。
決断は、両側の意見を理解し、両方の知識を十分にもって初めてできるものなのだ。
とりあえず賛成、とりあえず反対と言う前に、知ることこそ大事。
現代において情報を集めるツールは多いが、それを受け取る側の知識が不足している。
「科学者がまず一番最初に考えるべきなのは、どの道が人類にとってより有益かということだ」
このセリフは誰しもが心に留めておくべきことだと思う。
科学者を会社員に置き換えても全く同じ。
自分のやっていることに胸を胸を張れるかどうか。
会社の言いなりになって、人類のためにならないことをしてはいないだろうか。
「わかんないものはどうしようもない、などといっていては、いつか大きな過ちを犯すことになる」
ちょっと考えて、わからないとして放置する。
考えてもわからないからと考えることすら諦めてしまう。
そういったことを繰り返すと、わからないことに囲まれてしまう。
人間は好奇心により成長する。
好奇心により知識を増やし、考え方を増やしていくのだ。
「科学の発展や人間の未来といったものと環境保護を天秤にかける視点があるのなら話は別だが」
反対派の人間に湯川が言った言葉。
両方の知識を持っていなければ意味は無い。
片方だけの偏った視点しか持っていなければすべて穿った見方しかできない。
のめり込むが故に、本質を見失うことにもなってしまう。
一歩引いて俯瞰すること。
「答えを出すためには、自分自身の成長が求められている場合も少なくない」
今すぐに答えを出せない問題もある。
悩み続けることになる。
しかし悩むことにも価値があると湯川は言う。
焦らず少しずつ進むことで見える世界は広がるのだ。
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