【読書】プラチナタウン/楡周平 巨額の赤字に苦しむ地方の財政再建、サクセスストーリー
老後こそ楽しむべきだ、そう皆に希望をもたらしてくれる
本作は巨額の赤字に苦しむ地方の財政再建、サクセスストーリーだ。
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少し前から、地方の限界集落が増えてきただの、都市部への若年層の流出が止まらないだの、高齢化が進んでいるのは地方だだの、様々な不安を掻き立てる言葉を耳にするようになった。
事実、大都市には就職先や就学先を求めて若者が集まっている。
このような問題に対し、どうやって挑むか。
なかなか答えはでない。
本作の主人公は大きな商社に勤めてから、大赤字を抱えた町の町長になった男だ。
彼は、都市部にいる定年後、定年付近の高齢者を地方に惹きつけるための高齢者向けアミューズメントパークを作る。
高齢者と介護の問題は隣り合わせ。
今は介護が必要なくても、いずれは。
なかなか目を背けたく成るような現実であり、いざなってみないと実感がわかない。
介護が必要な人が行く先は老人ホーム。
何となく暗いイメージが先行する。
そんな思い込みを払拭すべく、町長が奔走する。
進んで入りたく成るような、そんなテーマパークを作る。
老後こそ楽しむべきだ、そう皆に希望をもたらしてくれる一冊。
赤字の町はどうやって生まれたか?
「納税者の意識がこんだけ低けりゃ、まさに行政側はやりたい放題だもんな」
町が赤字になってしまった原因は、公共事業のやり過ぎ。
不必要な道路、供給過多な行政施設、体育館など。
行政はなぜこんなことをしてしまったのか。
それは納税者であり、そこに住んでいる住民たちが無関心だったからだ。
自分たちのお金を使って作られたいらないものに対して、関心を持たなかったからだ。
自分が住む場所くらい、もっと知るべきなのだ。
お客様ではなく、主体と成るべき人なのだから。
「自分たちの尺度を超える話には、瞬間的に否定するという行動原理が本能として身に染みついてしまっているのだ」
理由なき否定。
それは考えることをやめてしまっているから。
現状維持が一番いいと考えている、無意識に思い込んでいる。
マイナス面ばかりを取り上げてしまうのはなぜだろうか。
危機意識を持っていないから。
傍観者であるという意識が強いからではないだろうか。
頑張った人が報われる世の中に
「まっとうに働いて来た人間が、人生最後にきて不安に怯えながら終えなきゃなんねえなんて、どう考えても不条理だ」
介護保険という国の制度は使える範囲が決まっている。
それ以外は勝手にやってくれということだ。
なぜ今まで頑張ってきた人間が、税金を払ってきた人間が不安を感じなければならないのか。
国は国民のために存在する。
国民が幸せでなければどんなに金があってもいい国とはいえない。
「この画一的思考回路、右へ倣えの行動様式が都市部への人口集中を生んで老後の暮らしを厳しい物にしてるってことに気がつかないのかね」
自分の人生の選択を他人に倣って決めてはならない。
それはただの思考停止。
自分の決断を自分で背負うことができないから。
自分だけが失敗することのないように、他人と一緒ならという気休めが欲しいから。
みんながやっているからではなく、自分がこうしたいからという主体性をもって生きていくことこそ、幸せなのではなかろうか。
ネガティブからポジティブへ
「まだ健康なうちに入居に踏み切れるような、魅力的な施設を造れ」
老人ホームの暗いイメージを一新し、誰もが入りたく成るような場所へ。
子どもや孫が訪れたくなるような、別荘をつくる。
イメージというものは非常に大事。
仕方がないから老人ホームにはいるのではなく、いい別荘を見つけたからそこに行く。
そういうポジティブな循環を創りだすことこそ必要なのだ。
「リタイヤできるということは、老後の手当てに目処が立った人間の特権というべきもので、労働という呪縛から解放されることだと考えるわけです」
日本人とアメリカ人の文化の違いだろうか。
仕事がなくなって寂しくなってしまう日本人と、特権を得たと考えるアメリカ人。
一朝一夕で国民性が変わるとは思わないが、リタイヤすることに憧れを持つ人はそこそこいるのではないだろうか。
そういう人は、楽しい老後を過ごせるはずだ。
利益重視ではなく、社会貢献を
「企業は金儲けだけすればいいというものではありません。
貢献してくれた従業員に、ひいては社会に、持てる力を還元する義務があると思うんです」
本当にそのとおりだと思う。
会社が株価に一喜一憂することほど寂しいことはないのではなかろうか。
株主を喜ばせることが一番の目的なのだろうか。
ステークホルダーは、株主だけでなく、従業員も含まれるのだ。
社会に胸を張れるような会社じゃなくては、従業員は誇りを失い、お金をもらうだけになってしまう。
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