【読書】県庁おもてなし課/有川浩 県庁職員が県の観光地化を推進すべく駆けまわるお仕事小説
県庁職員が県の観光地化を推進すべく駆けまわる物語
だが、それ以上に本作はお仕事小説だ、社会派小説だ。
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公務員、行政といえば、縦割りでお堅い組織というイメージがある。本作でもそれは健在。
だが、主人公たちは、その殻を破るべく、四方八方から攻める。
本質を見誤る事のないように、何が目的か見失わないように、
視点を切り替えながら、全力で走り続ける。
元気と仕事への情熱がもらえる。
映画化もされている。
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「すでに他の自治体で定番化している制度を取り入れ、
応用しているだけのことに独創性など欠片もありはしない」
0から1にするのは苦手だが、1を2にするのは得意。
日本人にはそういうイメージがある。
既存のものを改良して、低コストにしたり、高性能化することは非常に得意である。
一方、あらたなモノや独創的なサービスを創ることは苦手。
公務員だけではなく、日本全体として、認識すべきことだ。
「経済の活性化は民間からだよな。県はそのサポート役であるべきだ」
中途半端に県が独立採算制を採用しているがゆえ、利権や軋轢が発生する。
行政が稼ぐ必要はない、なぜなら観光で稼ぐのではなく、税金で稼いでいるのだから。
あくまで主役ではないことを意識すべきなのだ。
主となる民間企業とサポート役である県、その役割は非常に明確である。
企業のサポートというと銀行のような金融機関もあげられる。
特に銀行なんかは、自分が儲ける必要がなくなったほうが、サポートに徹することができるのではないだろうか。
株式会社なんかにするから、利益を追求せざるを得なくなる。
稼がない銀行があっても良いんじゃないだろうか。
「土地に金が落ちてくるシステムを考える、それは自治体が胸を張って取り組むべき仕事だ」
行政が稼ぐのではなく、その土地にいる人達が稼げるようにするビジネスモデルを創ることが行政の使命。
自分の目の前にある仕事だけを見ているのではなく、県という視野で物事を考える。それが県庁職員か。
「右の頬を張られたら左の足を素知らぬ顔で踏み返す」
社会にある軋轢を上手く切り抜けるためには、横槍をまともに受けてはならない。
非常識に常識的に立ち向かう必要は全く無い。
夢中になって気づかないときもあるだろうが、一歩下がって周りをみる冷静さだけは忘れてはならない。
「手続きを守るのが最優先の組織」
共通の目的のために、手続きをつくり組織を束ねている。
いつの間にか、手続きの先にある目的が忘れ去られ、手続きが神として崇められる。
どこの会社でも同じだろうが、負の遺産は消し去るべきなのだ。
「職分とか職域を考えて縄張り分けしゆう場合じゃなくて、
思いついたことを何でもやれる部署にならんといかんがや」
そういう部署が一番楽しいだろう。
自分の役割とか、与えられた仕事、範囲なんて所詮は、目的のための手段。
遠くをみて飛び越えるべきものだ。
「口に出さなきゃ意味ないんだよ」
思っているだけではだめ、口に出すことで何かが動くかもしれない。
そういう意味でインターネットは良いツールなのだろう。
政治にももっと有効利用できると思うのだが、求められるのはモラルか。