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aichikenminの書斎

20代サラリーマンが、読んだ本と、心に残った言葉、その時考えたことを徒然なるままに書き留めたもの(金融、理系、工学、航空機、読書)

【読書】鏡の花/道尾秀介 ほんの小さなことで、世界は変わる。

「もう一度あの光の中に戻ることができたら」

鏡の花 (集英社文庫)

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世界の明暗を分けるのは、いま自分がしたたったひとつの小さなことかもしれない。

 

そんなifを描く作家、道尾秀介

本作もそんな彼の作風を代表する作品だと思う。

 

鏡の花は6つの章からなっている。

それぞれ別の視点から描かれている。

しかも細部が微妙に異なっている。

 

同じ登場人物が共通するものの、パラレルワールドのような形になっている。

そして最後には登場人物が一堂に会する。

世界の暖かさと美しさ、そして今の世界での幸せを噛みしめる彼ら。

 

すべての物語が呼応し、美しく描かれる。

一つの世界が創られるのだ。

後悔することを始めれば、終わりはない

「いったいどうすればよかったのだろう。どこから間違えていたのだろう。自分たちはいつ、何に失敗したのだろう」

息子を失った両親は考える。

何が間違っていたのかと。

物事にはきっかけがある。

それは些細なことかもしれない、はるか昔のことかもしれない。

考えれば考えるほど、原因はたくさん出てくる。

後悔というものがまさに当てはまるのだ。

 

 

思い出と割り切り

「葬式や法事というのは生きている人のためにあるのだと」

死んだ人は生き返らない。

しかしながら生きている人は、死人を日々の生活で思い起こす。

それを明確にするのは葬式や法事といった儀式である。

思い出すきっかけでもあり、忘れるきっかけにもなる。

 

「死んだ人は、こんなふうに、みんなもう一度死ぬのだろうか」

人は死ぬ、そのあともう一度。

人のなかで忘れられた時だ。

少しずつ変わる、記憶も。

徐々に薄れていき、その人がいない生活にも馴れてくる。

それが悲しいのか、幸せなのか、人間の性なのだろう。

 

家族という存在のありがたさ

「これまでも、これからも、自分の抱える重みを母が等分して抱えてくれるのだという確信をくれた」

家族、そして親というもののありがたさがここにつまっている。

何気ない一言で辛さがなくなる。

そんな言葉を今の自分はかけることができるだろうか。

人からどれほど頼られることができるだろうか。

やはり親というものがどれほど凄いのか、実感せざるを得ない。

 

鏡の向こう側

「鏡を剥き出しにしておくと、あの世に引きずり込まれてしまうと言われていたからだ」

本作の題名にもなっている鏡。

鏡はあの世との境目と言われる。

その先には、あの世が待っていると。

 

「似ているけれど同じではない世界が、ここにあったはずだ」
「こんなに綺麗な場所は、ここにしかない。こんなに眩しい場所は、ここにしかない」

本作を象徴する言葉。

少しずつ異なった世界が流れる中、最後に彼等は気づく。

自分が今いる世界が一番幸せなのだということを。

思いにより世界に見え方が変わる。

キラキラと光り輝く世界に。

 

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