【読書】ノエル/道尾秀介 どんな状況でも自分の捉え方次第で世界は変わる
3人の男女が紡ぐ切実な童話が運命を変える
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孤独と暴力に耐える日々の中で、級友の弥生から絵本作りに誘われた中学生の圭介。
妹の誕生に複雑な思いを抱きつつ、童話を書き始める小学生の莉子。
妻に先立たれ生きる意味を見失いながら、読み聞かせをする元教師の与沢。
彼ら3人はそれぞれ自分だけの物語を紡ぐ。
悲しい現実を飛び越えていく。
それぞれの物語は別々に動き始めているようだ。
しかし遠くでつながっている。
人が、人と人との関係のなかで生きている。
懸命に生きる様子を、童話という媒介を通して見せつけてくる。
物語を作るのは小説家だけではない。
幸せな世界、それは多様性が許される世界
「 どっちがいいんでしょうねえ?」
有名なサンタクロースの歌は、英語と日本語でその結末が違っている。
どちらが良いとは一概には言えない。
世の中の多くのことは二律背反。
解釈によって様々な結末答えが現れるはずだ。
みんな違ってみんな良い、それを許容できる世界というのが優しい世界なのだと思う。
自分が生きた意味とは
「何も自分はできなかった。何十年も生きてきた意味が果たしてどこにあるのかわからない」
元教師の与沢は、自分の人生の意味を考える。
自分は教師として人に何を与えることができたか。
その結果として、世界に何か残すことができたのだろうか。
マイナス方向の考えは徐々に増幅し彼を追い詰めることとなる。
「いいのいいのそんなの適当で。こっちがちゃんと受け止め方を工夫するから」
与沢は若者に向かってこう言う。
年を取ることで得られる能力というのは、自分がどう受け止めるか受け流すかを考えられること。
年を取り成長するということは、受け止め方を増やすということ。
それが人間としての器の大きさにつながるのではないだろうか。
「 お話の世界に逃げ込むという意味じゃないんだ。物語の中でいろんなものを見て、優しさとか強さとかいろんなものを知って、それからまた帰ってくるんだよ」
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