aichikenminの書斎

20代サラリーマンが、読んだ本と、心に残った言葉、その時考えたことを徒然なるままに書き留めたもの(金融、理系、工学、航空機、読書)

【読書】ラットマン/道尾秀介 思いのすれ違いが生むストーリー

思いのすれ違いが生むストーリー

相手を思うがゆえに、お互いに錯覚し、勘違いし、合理化し、それを気づかぬまま時は過ぎる。

ラットマン (光文社文庫)

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題名のラットマンとは心理学の分野で有名な、人の絵にまぎれている場合は人の絵に、ネズミの絵と並んでいるときはネズミに見える絵のこと。読み終わって納得する。

 

誰のところにもありえそうな、一つのボタンの掛け違えを上手に描く、それが道尾さんの本。

 

「過ちと正しさが、そっくり同じ顔をしているのであれば、誰がそれを見分けられるというのだ」

一つの勘違いが、すべてを変えてしまう

リアル、本当にリアルな人間の様が描かれている、そんな小説。

リアルの中にあるどんでん返し、これに尽きる。

 

 

 

「一生懸命に真似をすれば、その人の本当にやりたかったことがわかる」

心まで、気持ちまで人になりきることで、学ぶことは多い。

真似をするのは、中途半端ではいけないという教訓。

 

「頭に書き込んだ記憶を、ときおり再生し、ただそれだけで満足していればよかったのだ」

記憶は美しい。いつのまにか現実離れすることもある。

見なくていいもの、見ないほうがいいものは世の中にたくさんある。

たまに、目の前に突きつけられると、どうしたら良いかわからなくなる。

 

「どんなときだって明日は来るんだよ」

単純な言葉なのだが、響く。

この人の作品は、背中を押してくれるような言葉が自然と入っている。

それが大きな魅力の一つだろう。