aichikenminの書斎

20代サラリーマンが、読んだ本と、心に残った言葉、その時考えたことを徒然なるままに書き留めたもの(金融、理系、工学、航空機、読書)

【読書】球体の蛇/道尾秀介 嘘が嘘を呼び、真実が隠され、変わる運命

嘘が嘘を呼び、真実が隠され、運命が変わる

嘘と真実が織り交ざり、重なりあった先にあるもの。

嘘が嘘を呼び、真実が隠され、運命が変わる。

球体の蛇 (角川文庫)

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ほんの少しのきっかけが、些細な出来事が分水嶺になっていた。

読者という俯瞰した風景だからこそわかること。

自分の周りにもあるかもしれない。

そんな気になるほど現実感のある物語。

 

 

「相手を無根拠に見下している目つき。
何かを頭の裏側でいつも計量しているような目つき」

普段の生活では触れないような表現であるが、理解できる。

こういう目つきをしている人間とは、仲良く慣れないし、信用出来ない。

選挙で投票する際には、意外と重視するかもしれない。

 

「もし本当の枝豆のように、人の莢の中を簡単に覗くことができたら、どんなにいいだろう。
この世の問題の大半は、きっと怒らずにすむのではないか。
他人によって左右されていくはずの運命を、人は自分で選ぶことができるのではないか」

登場人物が人間は枝豆のようだと言っていたことに基づくセリフ。

嘘や本心を隠した言葉によって、間違った方向にいくことは多くある。

相手の中を見ることができれば、それを回避できるだろうという思いがこもっている。

 

 

「酒を飲むのが恥ずかしいから、それを忘れようとして酒を飲んでいた男」

星の王子さまの話を思い出している主人公。

忘れたいという思いの繰り返しにより、いろんなものを隠している。

一番はじめはなんだろうか。

嫌なことを忘れたいがために酒を飲む。

忘れたいこともあれば、目をそむけてはいけないものもある。

その見極めは大切だし、難しい。

 

「それぞれに嘘を抱えた人間」

この物語の中には、嘘を抱えた人間がたくさん出てくる。

そしてそれらが繋がり合っている。

自分のために嘘をつくのではなく、大切な人のために嘘をつく。

良かれと思っていたことが、実は裏目に出ている。

互いに互いを強く思いやるが故に、すれ違ってしまう思い。

本心でぶつかることを恐れたために、ズレが生じてしまう

人との付き合いが希薄になりがちな現代社会において、恐ろしい現実感をもって迫ってくる。

 

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