aichikenminの書斎

20代サラリーマンが、読んだ本と、心に残った言葉、その時考えたことを徒然なるままに書き留めたもの(金融、理系、工学、航空機、読書)

【読書】微笑む人/貫井徳郎 理解不能の事件、そして動機

小説家が見た真実はどこにあるのか

微笑む人 (実業之日本社文庫)

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人間の多様化が進んでおり、起こる事件も複雑怪奇になった現代。

「本が増えて家が手狭になった」

動機を話す犯人の言葉。

 

犯人の意図は何だろうか。

本当の動機を隠しているのあろうか。

それとも本当にこれが動機なのだろうか。

 

犯人を追う中で、小説家は気づく。

犯人の周りで奇妙な死が起こっていることに。

 

微笑む彼は、何を思うのか。

犯人の人格はどこで形成されたのか。

最後の最後まで物語は変化を続ける。

微笑む人とは誰なのか。

 

恐怖は身近なところにある。

近くに凶悪犯が潜んでいるのかもしれない。

他人を理解することはできるのだろうか

「人は他人のことをどれくらい理解できるものだろうか」

犯人の動機が理解できない。

それは赤の他人だからだろうか。

例えば、友人、家族といった近くにいる人のことは十分に理解できているだろうか。

境目はどこにあるのか。

 

 

力を持っているものは使い方にも責任がある

「マスメディアの暴力ですよね。人の人生をなんだと思っているのか」

マスメディア側の主人公が取材中に受ける言葉。

所詮は民間企業であるマスコミ。

彼らは何が出来るのだろうか、何をする権利があるのだろうか。

マスメディアは自分の力を理解してないのだろうか。

力を持つものはそれにともなって責任を有する。

ガバナンスという言葉が一番必要な業界なのだろうか。

 

理解の範疇を超える人間もいるのだ

「世の中には殺人に対する禁忌の観念が完全に欠如している人間もいるのである」

常識という枠組みからはみ出ている人間には、法律は対処できない。

なぜなら必要最低限は所与のものとして構成されているから。

論理の中に当たりまえに組み込まれているものが、欠如している。

そんな人、犯罪が出てきた時に我々はどう対処することができるのだろうか。

 

 

理解の範囲外に置きたくないからこそ簡単なストーリーを求める

「世間の人はみんな、わかりやすいストーリーを求めてるんですよ」

人々は簡単に理解できるものを求める。

常識の範囲内で分かりやすいもの。

そうすれば自分がその外側にいるという安心感を得られる。

簡単であることがステータスであり、それに答えるためにマスメディアは分かりやすい答えを示す。

本質を捉えていればいいのだが。

 

つかの間の安心を得るためだけに

「私たちは他人を理解しないまま、わかった振りをして生きている」

人は他人を理解し得ない。

わかった振りをして安心しているだけ。

本作でも主人公は、理解したようで理解できていなかった登場人物が出てくる。

何を考えているのかわからない相手の恐ろしさ。

微笑む人の恐ろしさ。

 

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