aichikenminの書斎

20代サラリーマンが、読んだ本と、心に残った言葉、その時考えたことを徒然なるままに書き留めたもの(金融、理系、工学、航空機、読書)

【読書】横浜駅SF/柞刈湯葉 横浜駅は常に工事が行われている状態こそが完成形なのだ

改築工事を繰り返す横浜駅横浜駅が自己増殖を開始し、それから数百年後の世界。

横浜駅SF (カドカワBOOKS)

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日本の本州は99%が横浜駅となった。
その中でJR北日本そしてJR福岡の二社が防衛戦を続けていた。
そんな世界のお話である。
脳に埋め込まれたsuicaで人間が管理されるエキナカ社会。
その外側で暮らす非スイカの住民ヒロト18きっぷを託された。
それを使って横浜駅の中に入り込むことができた。
横浜駅には何があるのか。
知らず知らずのうちに彼は人類の未来を担うことになってしまう。
 

 

非常にキャッチーなタイトルだと思う。
そしてそれにまんまと乗せられて買ってしまったのが私。
題材はすごく現実的なものである。
ただしそれが想像できないほど非現実に近づいていく。
支配された社会と、それに立ち向かう人々、それに迎合をしてしまった人々。
不思議なもので、この設定がすっと入ってくるのはなぜだろう。
なんとなく駅という空間に対し、人を飲み込む恐ろしさというものを感じているからなのだろうか。
人が駅を作っているのか駅が人を作っているのか。
だんだんわからなくなってきたり。
とりあえず言えるのは満員電車は嫌いです。

駅という空間に支配された人間たち

「 駅に依存しない生活」
「 どう考えても1000万もの人間が屋外の都市で生きていることがうまく想像できなかった」
逆にそれが難しくなるほどに、駅というものが自分たちの生活の一部になっていた。
駅によって管理された人間たち。
ニワトリ、卵の議論から大きく偏ってしまった。
駅は人間が作るのではなくなった世界。
駅はそこにあるもの、そして駅に支えられている人間たち。
 

 

理解していないことを認める勇気

「 覚えてはいるけど理解はしていないってことか」
意外と多いかもしれない、こういうこと。
AはBであるということは感覚的に理解をしている。
しかしながら、なぜか論理的にと聞かれると詰まってしまう。
それは自分が理解をしていないことだと潔く認めるしかない。
 

世代交代という現実を見る

「人は老いて死ぬ。横浜駅も老いて死ぬわけです。この会社だってそうでしょ。生きてるからにはちゃんと世代交代をしないといけないってことですよ」
人だけでなく物体も、新陳代謝を繰り返し、生まれ変わっていかなければならない。
そのボタンを押す人間がどれだけいるだろうか。
あなたはボタンを押すことができるだろうか。
駅が増殖するSFから、哲学を教えられるとは思っていなかった。
 

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