aichikenminの書斎

20代サラリーマンが、読んだ本と、心に残った言葉、その時考えたことを徒然なるままに書き留めたもの(金融、理系、工学、航空機、読書)

【読書】クライマーズハイ/横山秀夫 未曾有の航空機墜落事故で向き合う職業への覚悟

御巣鷹山の事故当時、著者は地元紙の記者であった

クライマーズ・ハイ (文春文庫)

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1985年、御巣鷹山に 未曾有の航空機墜落事故発生。
地元紙の遊軍記者、悠木が全権デスクに任命される。
報道という窓口を通して、事故現場の様子を伝える彼等。
その中で、様々な葛藤がある。
いかに他社よりも早く記事を出すか、しかしながら十分な裏とりが必要である。
その狭間で揺れ動く。

 

また、読者に対しどこまで寄り添うか。
どの記事がどういう影響を与えるか。
そこまで全て、含んだ上で彼らは記事を書く。
それが 報道という職業に関わる人間たちの覚悟かもしれない。
今一度自分の職業に対する覚悟を思い出す。

自分の、会社の役割とは何か。今一度振り返る

日航をトップから外すわけにはいきません。520人は群馬で死んだんです」
彼らは、北関東新聞というローカル新聞の 社員である。
彼らが作る新聞は群馬を中心に配布されている。
その新聞の役目とは何か、全国紙との違いは何か。
それはローカルであるということ。
ローカル新聞が、群馬で起こった大事故を蔑ろにしてはいけないのだ。

 

最後は報道の倫理

「確信の持てない事故原因」
悠木ら、北関東新聞の記者は有力な情報を得る。
どこもまだ発表していない事故原因の情報だ。
果たして、それは正確なのか。
100%ではない、だがおそらく確かである。
その状況下で、人間はゴーサインを出せるのだろうか。
もし間違っていた時にどういった影響が現れるか。
特に遺族らからどの様な反応をもらうのだろうか。
すべて、悠木の双肩にかかっているのだ。
 

知らず知らずのうちに振りかざした大きな力

「どの命も等価だと口先で言いつつ、メディアが人を選別し等級化し、命の重い軽いを決めつけその価値観を世の中に押し付けてきた」
悠木は20代の女子大生に気付かされる。
知らず知らずのうちに自分がしていた行為に。
自分が正しいと思っていたこと、それは幻想かもしれない。
押し付け、思い込み。
メディアという媒体は、大きな力を持っている。
それを認識して使う、使われるを決めなければならない。
それこそが社会性をもつということだ。
 

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