【読書】本日は、お日柄もよく/原田マハ 働きたくない。そんなときにオススメの元気が出る激アツお仕事小説
元気が出る激アツお仕事小説
一言で言うと、元気が出る激アツお仕事小説。
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不思議な題名と、表紙の珍しいデザインに惹かれた。
スピーチライターというスピーチの原稿を書いたり、話し方の指導をしたりする職業のお話。
序盤は、ふわふわしたOLが主人公で、恋愛成分多めなのかなぁと思っていたら、
直ぐに、情熱と知性あふれるお仕事小説が顔を出した。
登場人物のスピーチも、人を惹きつける。
はじめは結婚式のスピーチだったが、徐々にスケールが大きくなり、政治家の演説と選挙対策というところまでいく。
政治に興味のない人も読みやすいし、またこれによって政治に興味を持つ人は増えるはず。
これだけの情熱を持った人たちが政治家をやっているのであれば、日本は楽しみだ。
次の選挙で、演説にもう少し耳を傾けるキッカケになるかもしれない。
「困難に向かい合ったとき、もうだめだ、と思ったとき、想像してみるといい。
三時間後の君、涙がとまっている。二十四時間後の君、涙は乾いている。
二日後の君、顔を上げている。三日後の君、歩き出している」
こんなにも素敵な言葉が、この小説には詰まっている。
「親が子を大切に育て、子が親を命尽きるまで大切にしてきた、私たち日本人のあるべき姿なのですか」
高齢者医療制度への批判をする議員のスピーチ。
国にはいろんな制度がある。
制度は本来の目的に沿って作られ、運用される。
しかしながら、時とともに本来の目的が見失われ、制度自体が目的になることもある。
会社の中でのルールだってそう。
働きやすい制度を作っても、いつの間にか制度を運用することに焦点が当てられる。
いつでも、本来の目的を思い起こしながら、組織というものは行動すべきだ。
「ひとりでも多くの心をとらえてこそ、スピーチは完結する」
基本的なイメージは、おっさんの話は長い。
だから途中で飽きてしまう、そう、校長先生の話のように。
何かを伝えるためのスピーチと義務的に行われているスピーチ。
両者は全く違うもの。
伝えるためのスピーチは、簡潔に、論理的に。
その中に、感情が含まれていてもいいと思うが、感情だけではだめだ。
論理の中のスパイスとして、感情が混ぜられていると、僕は心をつかまれる。
そんな気がする。
「貧乏学生の下宿、つまりは知的好奇心の伏魔殿みたいなもんだ」
そうなんだよ、学生って知的好奇心の塊。
学生じゃなくてもそうか。
人間って知ること、考えることが大好きだ。
考えないとつまらない。
ただ、議論って相手がいないとできないからね。
会社で議論ってあんまりした記憶がないなぁ。
所詮、作業員だからかな。
「自分がいなくても、母は大丈夫に決まっている。なぜだか、そんなふうに都合よく思いこんで」
勝手に自分の中で、理由を付けて納得して、本当に大切なものを見失うこと。
見なければならないものから目を背けること。
無意識でやっていることが後で後悔することになる。
自分の中の優先順位をはっきりさせることが重要。
会社の中では、不特定多数の一人で換えはいくらでもいる。
しかし、家族の中では、自分は一人しかいない。
もちろん、父親も母親も。
わかってはいるのだけれど、なかなか行動に移すことも難しい。
「自分に一番身近な、自分にとって一番大切な人を守りたい。誰もがそう思っている。そして、そうできる世の中を作ることが世の中をよくするってことなんだ」
政治や行政に携わっている人の根底にはこの意識があるのだろう。
民間企業でもそうではないだろうか。
何かを守る。
そのために自分は何ができるか。自分は何をするのか。
自分の仕事は世の中を良くすることができているだろうか。
「自分たちが動けば、世の中が変わるかもしれない」
こう思ったら、人は動き出す。選挙に行くようになる。
いまの投票率の低さは、本当に異常だと思う。
政治ってよくわからないし、誰がやっても対して変わらない、だから興味が無い。
そういう思考停止状態に陥る人は少なくないと思う。
公民の授業って、学校にいる間は、大して興味もないし、重要視もされない。
政治を教育に持ち込むのはタブーとされている。
でも、全く教えないのもどうかと思う。
そのツケが回ってきて、いまの低い投票率が出来上がっているのではなかろうか。
少しでもキッカケを与えることができれば、あとはインターネットという便利なツールがあるから、知識は雪だるま式に増えると思う。
大事なのは、はじめのほんの少しの後押し。