【読書】小暮写真館1/宮部みゆき 信じるモノは写真の中に見えてくる
あなたの写真の秘密を解き明かします
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宮部みゆきは本当に不思議な作家だと思う。
シリアスなものからファンタジーまで。
血みどろの殺人事件から萌えるキャラクターが走り回る世界まで。
何でも書ける、そんな作家だと僕は思っている。
今回宮部みゆきが選ぶのは、ちょっと不思議な家族。
古びた商店街にひっそりと佇む写真館。
ただし営業はしていない。
なぜなら主人公の一家が買い取った建物だから。
昔の写真家の建物そのままに、彼らは住居として小暮写真館に住み始めた。
主人公の花菱英一は、その写真館絡みの謎に巻き込まれる。
ある女子高生が持ってきた一枚の写真、それは幽霊が映っている心霊写真であった。
その謎を解くため彼は走り回る。
奇妙な人々のつながり町の人々とのふれあい、そして彼自身の成長の物語。
写真に映るもの、それは見たいと思うもの
「 そのように考えたいという人間の性のなせる業としか言いようがない」
人はなぜ、心霊写真というものを信じるのか。
それはその人自身が信じたいと思っているから。
霊が映ることもある、そういうものだと信じたいのだ。
そうすることで死=無という概念の外側に出ることができる。
人は自分を信じたいし、自分が正しくありたい。
そう願う中で、どこかに誤魔化しが必要となる場面がある。
目を瞑らなければならない時がある。
そういう場合に人は、何を信じるのか。
現実以外の何かしかないのだ。