aichikenminの書斎

20代サラリーマンが、読んだ本と、心に残った言葉、その時考えたことを徒然なるままに書き留めたもの(金融、理系、工学、航空機、読書)

【読書】美人薄命/深水黎一郎 老婆は笑顔で言う、美人薄命と

思い出は綺麗なままでいることが大切

美人薄命 (双葉文庫)

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弁当配達のボランティアをする大学生、総司。

彼は意識高くボランティアをやり始めたのではない。

大学の単位のために、仕方なしに始めたのだ。

 

そこで彼は、カエという老婆に出会う。

彼女は片目の視力を失い、貧しい生活をおくっている。

徐々に彼女と親しくなる総司は、彼女から昔の思い出話を聞かされる。

それは彼女が結ばれなかった男性との悲しい物語。

 

最後に、待っている意外なラスト。

あちこちに伏線が散りばめられており、鮮やか。

 

老婆は笑顔で言う、美人薄命と。

正しいと思い込んでいるから折り合わない 

「何處の國民だって自分の國が神の國で、自分たちが神の民だと思ってゐるよ」

戦争が起きるのは、お互いに自分たちが正しいと思っているから。

だからこそ、引き下がることができない。

なぜなら前提が違っており、お互いに納得できる落とし所が見つからないから。

話し合いでどうしようもなくなってしまったからこそ、拳を振り上げる。

それがわかっていながら戦わなければならない人も出てしまうのだ。

 

 

人のために、社会のために

「何でも良いから他人様の役に立つことがしたかったの」

ボランティアを始めたきっかけをこう語る。

人間は人のためになる、それにより自分の価値を見出す。

すべてがすべて、この考え方で正しいとは思わないが、それにより社会が少しだけ優しくなれたらいい。

 

全てが全てお金になる時代はくるのだろうか

「人助けもボランティアも、全てがお金で換算される時代が」

政府の政策はあくまでお金が根底にある。

なぜなら、目に見える形でなければ人を動かすことができないから。

ひいてはお金により動く企業が大きくなりすぎたから。

資本主義の弊害とも言える今の状況において、社会福祉とは相反してしまう。

今一度、何故に企業が存在するのかを問い直さなければならない。

 

時代は変わる、いい意味でも悪い意味でも

「何にしても、勉強できてうらやますいなあ」

カエは大学生の総司に向かってこういう。

大人はだいたいこういうのだ。

なぜなら必要となったときには時間がなく、なおかつ、それまでは必要だと思わないか

ら。
勉強するには時間と体力がいる。

もっと社会人にも勉強する機会を与えてくれる場所があればいいのだが。

 

信じるものは自分次第

「人間って、現実よりも虚構の方を大切にする生き物かも知れないわよね」

人は思い出を美化する。

自分の中でのみ、幸せな記憶であればいい。

現実よりも自分の信じる虚構を追い続けることで人は幸せになることもできる。

要は、幸せになるにはどうしたらいいか、それの方法が皆バラバラなのだ。

現実にお金だけあったとしても、それは中身が空っぽかもしれないのだから。

 

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