【読書】虚ろな十字架/東野圭吾 死刑は無力だ
死刑は無力だ
娘を強盗に殺された男が、その悲しみから立ち直りつつあるころ、元妻が殺される事件が発生。
娘を失った後に彼らは別々の道を歩んでいたが、事件をきっかけにそれぞれの生き方、そして裁判のあり方に目を向ける。
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目には目を、歯には歯を。
殺人には死刑で果たして本当に正しいのか。
罰とはなんだろうか。
読了後、深い深い問いの中に迷い込む。
背負うべき罪の大きさはどう決めるか
「これは単に量刑を決めるための裁判ではありません。罪の重さを訴えるための裁判なんです」
被害者遺族は、何を望むのか。
罪と罰、天秤にかけて釣り合うことなどありはしない。
関わる人が多ければ、思い通りにならない人も増えてくる。
そもそも刑罰により何を求めるのか。
罪人に更生して欲しいのだろうか。
一般的に、画一的にできるわけがない、各々罪は違うのだから。
「人を殺せば死刑ーそのようにさだめる最大のメリットは、その犯人にはもう誰も殺されないということだ」
そう、確かにそうだ。
いままで死刑について、強く考えたことはなかったが、再犯というのは絶対に、絶対に起こさせてはいけない。
「日本のルールがそうだから、罪に向き合うにはそうするしかないと思っただけだ」
法律というものは、人の価値観までも作ってしまう。
法律とは、国家とは、なんて難しいものなのだろう。
画一的な答えしか得られないのであれば、裁判なんて必要ない。
個別性が強いからこそ行われるのだ。
しかし、人が刑を決めるというのは本当に難しい。
法律を決める人は、国家の影に隠れてつくっているが、実際に運用する裁判官は、逃げも隠れもできない。
裁判員制度は、一般人にこれをやらせるのか。
重くのしかかる重圧とそれを当事者として捉えづらい一般人に東野圭吾は問いかけて、考えさせてくれる。