【読書】カラスの親指/道尾秀介 優しさに溢れている小説
優しさに溢れている
この人の小説は優しさに溢れている。犯罪者集団(?)が主人公の小説。ただし、彼らはそれぞれ重たい過去を秘めている。その結果がいまの彼らの生き方であり、スタンスである。
最後まで、本当に目が離せない。綺麗に騙された、と同時に、元気をもらえる小説。
僕は、完全に騙されていた、最後の最後まで。鮮やか。
「ずっと地面に這いつくばるようにして生きてきたんです。だからいつか、飛びたいんです」
我慢して、努力してきたからこそ飛びたい。
思いを強く持ち続けることが飛ぶための第一歩
「住む家があるというのは、やはり何より嬉しいことだ」
自分の帰る場所、あるだけで安心するし、またがんばろうって思える。
「世の中、ほんとに大きなものなんて、そうそうありません」
大きすぎて手の届かないようなものなんてない。
ただ、そう見えているだけ。
大きいものってなんだろう。子供の頃は父親の背中でした。いつの間にか僕のほうが大きくなってしまった。だけど人間としてはまだまだ小さい。
「この世の中は、とても真っ白な心を持った人間が生きていけるような場所じゃない。」
人を疑うことが必要な世の中。無条件で人を信じることが難しい。そして近所の人とのつきあいも希薄になりがちだけれども、インターネットや携帯で遠くの人とも距離を感じずに話すことができる。
生きづらいことは間違いないが、そのなかで信頼できる人に出会えた時の喜びはまた大きくなる。信頼できる人とのつながりは絶ちたくないし、そのための多くの力が今の世の中には存在する。
悪いことばかりではないのだと信じて生きていきたいものです。
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