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aichikenminの書斎

20代サラリーマンが、読んだ本と、心に残った言葉、その時考えたことを徒然なるままに書き留めたもの(金融、理系、工学、航空機、読書)

【読書】罪の声/塩田武士 未解決事件の犯行声明に子供の頃の自分の声が使われていた

昭和の未解決事件、グリコ森永事件

罪の声

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犯行には子供の声が使われた。

本作は事実に即したフィクションである。

名前は微妙に変わっているが、事件は現実のものだ。

そして、犯罪に利用された子供たちがどのように暮らしてきたか。

そこにフォーカスを当てた作品である。

 

犯罪に巻き込まれることにより、人生が変わってしまう。

それを知らずにいた俊也は偶然知ってしまう。

家の奥にしまわれていたテープを発見する。

聞いてみるとそれは彼の声、そして事件に使われた声なのだ。

 

犯罪に巻き込まれた人間たちの苦悩と葛藤、そして真実を知りたいと欲する姿。

昭和の大事件の真実、そしてその裏側にある人間ドラマ。

犯行テープには自分の声が

「額から流れ出る汗にも気づかず、俊也は天を仰いだ。これは、自分の声だ」

ギン萬事件と呼ばれる事件の恐喝に使われたテープは子供の声であった。

しかも、その声は自分の声だった。

テープが見つかった場所は家。

つまりは自分の父親が関与している可能性が高いのだ。

 

人質は全国の子供

「青酸ソーダ入りの菓子を棚に並べた犯人たちは、多数の子どもの命を薄氷の上に晒したに等しい」

犯人たちは企業への恐喝のために、店頭にならぶ菓子に毒を入れた。

そう、全国民を人質に取ったのだ。

そんな凶悪犯罪に身内が関連していた。

その驚きは計り知れない。

大企業という遠くで起こっていた事件が、大衆のものになってしまったのだ。

 

 

事件は人生を変える

「ギン萬事件の十字架を背負う人生」

事件に関わったテープには複数の子供の声があった。

彼らはどのような生活を送っていたのか。

俊也は仲間を探そうとする。

 

組織の人間は、組織の中でしか生きられない

「警察官は組織内の水の中でしか生きられへん」

身代金の受け渡し現場において、警察官は犯人に肉薄する。

現場では捕まえることが出来るにも関わらず、上の判断で一網打尽にするために泳がした。

その結果、取り逃すことになってしまった。

所詮、自分の責任になるのが怖く、決断ができなかったということだ。

組織の中の人間とは、振る舞いが難しいものだ。

「人は満たされると腐るのだと悟りました。そもそも満たされるようにできていないんだ、と」

二人目の主人公とも言える新聞記者の阿久津。

彼は別ルートで事件を追う。

ロンドンで出会った容疑者は言う。

社会に対する反乱といえば聞こえはいいが、自分の復讐心を満たすだけであると。

人間という生き物がいかに醜いかを目の当たりにし、それに怯えてしまった。

 

 

過去だけではなく、将来を見据えた仕事を

「未解決事件だからこそ、今、そして未来につながる記事が必要なんやと」

阿久津は言う。

新聞記者のあるべき姿はなんだろうか。

過去を徒に掘り返すだけでなく、未来のためになる記事を書くこと。

そのために何ができるのかを探さなければならない。

「何ぼしんどうても、正面にある不幸や悲しみから目を逸らさんと「なぜ」という想いで割り続けなあかん。」
「その素数こそ事件の本質であり、人間が求める真実や」

阿久津の上司、鳥居の言葉。

新聞記者は、なぜという問いかけを繰り返す。

事件を因数分解し、問いかけの答えがすべて素数になるまで割り続ける。

真実を探すために泥をかぶることも多い。

そして本当に素数であるか見極めるのものまた難しい。

 

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