【読書】長い長い殺人/宮部みゆき 殺人事件の顛末を財布が語る
財布はいつも見ている我々の一番近い所で
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主役は財布。
財布たちが語る1つの事件に関する物語たち。
はじまりはひき逃げであった。
それが実は殺人事件だった。
被害者は男性、疑わしいのはその妻。
夫を引いた人物がどうなったのか、それを一度も聞こうとしないのだ。
しかも、夫には8000万円の生命保険がかけられていた。
しかし妻にはアリバイがある。
果たして犯人は誰なのか。
刑事でもなく、犯人でもなく、彼らの財布が語る物語。
全部で10個の財布が物語の語り手となる。
刑事の財布、探偵の財布、目撃者の財布、そして死者の財布。
最後には犯人の財布まで出てくる。
ここまで不思議な ミステリーはなかなかない。
なぜ財布に語らせるのだろうか、宮部はこう語る。
「財布はその人の一番近くにいる。」
自己顕示欲の強い犯人と、人の心を操るのに長けている人間。
世の中の闇は深い。
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【読書】小暮写真館2 世界の縁側/宮部みゆき あなたは誰かの家の縁側に座っているだろうか
世界の縁側に何がいるのだろうか
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小暮写真館の2冊目。
またも花菱が活躍する。
ひょんなことから、昔写真館だった建物に住むことになった主人公の花菱は、写真にまつわる事件に巻き込まれるようになった。
彼のところに持ち込まれる写真は、少し変わっている。
所謂、心霊写真と呼ばれるものだ。
第1巻で彼は、心霊写真の謎を解き明かしてしまった。
まさに解き明かしてしまったのだ。
そのせいで彼の元に依頼がどんどん持ち込まれるようになった。
「花菱くんは強力な霊能力者で心霊写真の浄化をしたことがあるって話だよ」
今回もその一つ。
何が起きたか、もちろん今度も心霊写真だ。
そして人の内面に踏み込む問題がそこには待っていた。
たかだか高校生で何が出来るか。
いや高校生だからこそできるということもあるのだ。
子供が頑張ってるのを見ると元気になる。
そして子供がまともな事を言ってるのを見ると、しょうもない大人になってしまったと自分を嘆いたりもする。
でも、そういうことを気づかせてくれるのが小説というものの魅力だと思っている。
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【読書】小暮写真館1/宮部みゆき 信じるモノは写真の中に見えてくる
あなたの写真の秘密を解き明かします
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宮部みゆきは本当に不思議な作家だと思う。
シリアスなものからファンタジーまで。
血みどろの殺人事件から萌えるキャラクターが走り回る世界まで。
何でも書ける、そんな作家だと僕は思っている。
今回宮部みゆきが選ぶのは、ちょっと不思議な家族。
古びた商店街にひっそりと佇む写真館。
ただし営業はしていない。
なぜなら主人公の一家が買い取った建物だから。
昔の写真家の建物そのままに、彼らは住居として小暮写真館に住み始めた。
主人公の花菱英一は、その写真館絡みの謎に巻き込まれる。
ある女子高生が持ってきた一枚の写真、それは幽霊が映っている心霊写真であった。
その謎を解くため彼は走り回る。
奇妙な人々のつながり町の人々とのふれあい、そして彼自身の成長の物語。
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