aichikenminの書斎

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【読書】二重生活/小池真理子 理由なき尾行、はじめました。

何の目的もない、知らない人の尾行

二重生活 (角川文庫)

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衝撃的な題名と帯のセリフ。

主人公の女子大生、珠は「何の目的もない、知らない人の尾行」を実行する。

本来尾行という行動は、何か明確な目的があり行われる。

何かを知るために、何かを探すために。

だが、文学的・哲学的尾行は違う。

目的など何もない。

他者を尾行することで自分にとっての何かを得る

 

傍から見ればただの変な人なのだ。

だが、本作を読めば、何か恐ろしいほどの魅力が感じられる。

主人公である女子大生が魅了されるのもわけないような。

 

不思議という一言では片付けられないが、不思議な感覚を得る。

目的なく他者の後をつける

「他者の後をつけて自分を他者と置き換えながら、或る特定の人物の行動を記録してみる」

これが文学的・哲学的尾行である。

尾行される側の人間に置き換えることで、自分は自分以外の誰かになれる。

主観の置き換え、視点の転換。

本を読むことと似ているのかもしれない。

相手が実在の人間であることを除けば。

 

 

自らの言葉で

「独自の言葉を使って表現できるような考え方をしていかなくてはならない」

人の言葉の受け売りや何かしらの本に書いてあった言葉をそのままトレースする。

それよりも何かもう一つ付け加えることでその人自身というものが垣間見える。

世の中で、我々は何をしているのだろうか。

コピペだけならば我々は人間ですらない。

 

「行動することが伴わなければ、なかったことと同じです」

頭の中だけで考え、考えるだけになっていること。

それは行動に移して初めて意味のある結果になる。

例えば研究開発でもそう、実際に人の役に立つことで始めて意味を為すのだ。

いつの間にか忘れてしまうこともあるが、非常に重要な視点。

 

人を追いかけながら自分の場所を探している

「ここではないどこかに別の人生があると信じ、夢まぼろしを追いかけていた人たち」

尾行をする過程で、不倫をしている人間たちを見つける。

彼らは今の家庭という枠組みの外側に別の何かを求めていた。

彼らを見る過程で主人公も同様の不安にかられる。

彼女自身も外側を探していることに。

 

自由を求めながらも束縛を好む

「秘密に呪縛されずにはいられない人間というものの不思議さ」

他人の秘密を知ることに対する不思議な興奮。

それとともに自分の秘密を誰かに知ってほしいという欲望。

これらに囲まれながら人間は生きているのかもしれない。

 

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