aichikenminの書斎

20代サラリーマンが、読んだ本と、心に残った言葉、その時考えたことを徒然なるままに書き留めたもの(金融、理系、工学、航空機、読書)

【読書】鏡の花/道尾秀介 ほんの小さなことで、世界は変わる。

「もう一度あの光の中に戻ることができたら」

鏡の花 (集英社文庫)

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¥666から

世界の明暗を分けるのは、いま自分がしたたったひとつの小さなことかもしれない。

 

そんなifを描く作家、道尾秀介

本作もそんな彼の作風を代表する作品だと思う。

 

鏡の花は6つの章からなっている。

それぞれ別の視点から描かれている。

しかも細部が微妙に異なっている。

 

同じ登場人物が共通するものの、パラレルワールドのような形になっている。

そして最後には登場人物が一堂に会する。

世界の暖かさと美しさ、そして今の世界での幸せを噛みしめる彼ら。

 

すべての物語が呼応し、美しく描かれる。

一つの世界が創られるのだ。

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【読書】スタフ/道尾秀介 人々の寂しさ、言葉にできない何か

人が抱える寂しさを気づけるだろうか

スタフ staph

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¥1,728から

主人公は都会で移動デリを営む女性、夏都。

彼女は姉の子ども、智弥と暮らしている。

 

夏都は旦那と離婚し、一人で移動デリを営んでいる。

移動デリは別れた旦那の夢であり、仕事であったものの、彼女はそれを引継いでいる。
なぜだろうか。

負けず嫌い、そして逃がした魚は大きいのだというアピールだろうか。

 

一方智弥は人付き合いが苦手な中学生。

パソコンばかりやっており、必要最低限の会話はせず、感情もあまり表に出さない。

 

二人で不思議な生活を続けている中、事件は起こる。

夏都がさらわれる、ランチワゴンごと。

そこで出会ったのはカグヤというアイドルであった。

彼女に頼まれて、彼女の姉である女優のために、一肌脱ぐことになってしまう。

 

テンポよく進む物語、だが、ところどころに違和感がある。

頼んだのはカグヤなのだが、皆それぞれに目的がある。

本当の主役は誰なのだろうか。

それがわかる時に、物語は違ったものになる。

 

家族が別れて暮らすことが珍しくなくなった現代において、人はどのような悩みを抱えるのか。

人は仲間を見つけたがる。

そして、人は何かになりきることで恐れや不安を見えなくする。

人々の寂しさ、言葉にできない何かをこの小説は見せてくれる。

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【読書】鬼の跫音/道尾秀介 過去に犯した罪や出来事に怯える人間たちの物語

過去に犯した罪や出来事に怯える人間たちの物語

本作には短編6つ。

いずれも不気味で恐ろしく描かれた物語。

鬼の跫音 (角川文庫)

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¥555から

過去に犯した罪や出来事に怯えている人間の物語たち。

ストーリーそれぞれに繋がりはない。

ただひとつ、すべてにSという人物が登場することを除けば。

 

おそらく、Sは同一人物ではない。

たまたまSという名前が一致しているだけなのか、

パラレルワールドでの話なのか、最後まで明らかにはされない。

 

自然に読み進めていくと、最後でひっくり返される。

衝撃の事実がさらっと書かれている。

そんな短編たちを作る道尾秀介

 

人の中にすむ鬼を目の当たりにする。

 

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