aichikenminの書斎

20代サラリーマンが、読んだ本と、心に残った言葉、その時考えたことを徒然なるままに書き留めたもの(金融、理系、工学、航空機、読書)

【読書】鬼の跫音/道尾秀介 過去に犯した罪や出来事に怯える人間たちの物語

過去に犯した罪や出来事に怯える人間たちの物語

本作には短編6つ。

いずれも不気味で恐ろしく描かれた物語。

鬼の跫音 (角川文庫)

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過去に犯した罪や出来事に怯えている人間の物語たち。

ストーリーそれぞれに繋がりはない。

ただひとつ、すべてにSという人物が登場することを除けば。

 

おそらく、Sは同一人物ではない。

たまたまSという名前が一致しているだけなのか、

パラレルワールドでの話なのか、最後まで明らかにはされない。

 

自然に読み進めていくと、最後でひっくり返される。

衝撃の事実がさらっと書かれている。

そんな短編たちを作る道尾秀介

 

人の中にすむ鬼を目の当たりにする。

 

  

世界が変わるのはふとしたこと

「自分の抱えていた問題は、なんて小さく、軽いものだったのだろう」

自分を客観的に見る時に、始めて気づくこともある。

無我夢中になっているときには見えないものがたくさんある。

でも、そんなに単純なことばかりではない。

この物語もそう。

少しだけ順番が変わっていたら、結果も変わっていただろう。

 

 

外に打ち明けられない悩みと助けて欲しいという望み

「哀しませるわけにはいかない。本当のことを言うわけにはいかない」

いじめを親になかなか打ち明けられない少年の一言。

親のことを思うがあまり、真実を話すことができない。

余計な心配をかけたくないと思う優しさの結果だ。

だが、親にとっては、何かを隠しているのは察することができる。

それを打ち明けてくれないことこそ、余計心配になるのだ。

子供の時には思わなかったことだ。

 

「もう一度変えてもらいたかった。たとえ、またすぐもとに戻ってしまうとしても」

少しのきっかけさえあれば、背中を押してもらえさえすれば。

そういう思いが込められた願い。

真っ暗闇の中、どんな些細なきっかけであってもすがりつきたくなる。

それが人間、弱い生き物だからこそ支えあって生きていく