aichikenminの書斎

20代サラリーマンが、読んだ本と、心に残った言葉、その時考えたことを徒然なるままに書き留めたもの(金融、理系、工学、航空機、読書)

【読書】満月の泥枕/道尾秀介 大切な人を失った時どう生きるか

肩肘張らず、のびのびと

満月の泥枕

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¥1,836から

娘を失った男、母に捨てられた少女、二人はろくでもない生活を送っていた。
酔っ払った男がある日、目撃する。
公園に人が沈められたところを。
沈められた男は誰なのか、泥酔していた彼には定かではない。
ワケありなアパート住人たちのドタバタ群像劇。

 

大切なものを失った後に、人がどのように生きれば良いのか。
主人公の二美男はかっこよくない。
かっこよくないんだけれどもかっこいいんだ。
笑って、泣いて、その狭間を行き来する。
まさに道尾作品なのではないだろうか。
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【読書】ノエル/道尾秀介 どんな状況でも自分の捉え方次第で世界は変わる

3人の男女が紡ぐ切実な童話が運命を変える

ノエル―a story of stories―(新潮文庫)

孤独と暴力に耐える日々の中で、級友の弥生から絵本作りに誘われた中学生の圭介。
妹の誕生に複雑な思いを抱きつつ、童話を書き始める小学生の莉子。
妻に先立たれ生きる意味を見失いながら、読み聞かせをする元教師の与沢。
彼ら3人はそれぞれ自分だけの物語を紡ぐ。
悲しい現実を飛び越えていく。

 

それぞれの物語は別々に動き始めているようだ。
しかし遠くでつながっている。
人が、人と人との関係のなかで生きている。
懸命に生きる様子を、童話という媒介を通して見せつけてくる。
物語を作るのは小説家だけではない。
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【読書】龍神の雨/道尾秀介 小説でしかできないことをやり続ける

想像は人を喰らう 観念の産物であるわけが人間を腹の底に飲み込もうとするように

龍神の雨 (新潮文庫)

新品価格
¥630から

蓮と楓は事故で母を失い継父と3人で暮らしている。

辰也と圭介の兄弟は母に続いて父を亡くし、母と慎ましく生活を送る。
似たような家庭環境を持つ彼ら。
彼らの物語が偶然交差する。
蓮は継父の殺害計画を企てた。
なぜなら、あの男は妹をひどいに合わせたから。
そして死が訪れる。

 

雨の中で起こる事件と複雑に絡み合う思惑、そして真実はどこにあるのか。
彼ら4人の未来はどこに向かっていくのか。
物語は、お互いがお互いを思うがゆえに悪い方向で転がっていく。
お互いのためを思ってつく嘘がさらなる悲劇を呼ぶ。
そんな悲しい連鎖。
運命のいたずらともいうのだろうか。
それらを全て見ている龍神は何を思うか、そして何を与えるか。
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