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【読書】武器輸出と日本企業/望月衣塑子 日本はどのような国になっていくのだろうか

日本としてどのような国になっていくのか

武器輸出と日本企業 (角川新書)

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日本は平和主義である

憲法9条にも謳われており、自衛隊は軍隊ではない。

 

だが、国内には防衛産業を営む企業も存在する。

もちろん、他産業も営んでおり、防衛だけではない。

 

いま、政府は彼らに武器輸出をさせようとしている。

政府は日本の経済を成長させるために、防衛産業の裾野を広げようとしているのだ。

世界の防衛需要を確保するために、輸出を進めようとしているのだ。

 

防衛省は積極的に推進しようとする一方、企業は尻込みをしている。

なぜなら日本の世論は、武器輸出に対して否定的だからだ。

あくまで平和主義という国だから。

 

自分の国で作られたもの、メイドインジャパンで人が死ぬのは見たくないものだ。

輸出して、使うのは日本人ではない、だが、作っているのは日本人、日本企業。

製造者に責任はないと割り切ることはできるのだろうか。

ダイナマイトと同じように、デュアルユースではあるものもあれば、明確に防衛のみに使用されるものも存在する。

そこの線引は非常に難しくもあり、科学の発展を妨げるものになってもいけない。

 

あくまで科学は人類のためにあるものであり、戦争が人類のためになるとは思わない。

だからこそ科学は戦争と結びつかないように、平和であり続ける道を模索しなければならない。

曖昧にしてはならない責任の所在

「デュアルユース技術という名の下で、武器輸出が政府によって推進され、これまで武器とは関係無かった日本企業の高度な技術や商品が、世界の武器市場に拡散する可能性が高まっている」

自分の作った製品が人を殺めるような技術に変身することも起こりうる。

それをエンジニア個人の責任にすることは非現実的であるし、一企業にそれを求めるのも酷である。

政府がどこまでを許容し、明確なラインを引けるかが、日本の尊厳を維持する方法であろう。

 

 

輸出する意味はあるのか

「それでも日本は、武器輸出への覚悟があるのか」

防衛技術、防衛産業はそれほど儲かるわけではない。

特に日本の製品は従来防衛省にのみ販売されているものであり、海外から見れば実績はほぼなし。

そして価格競争力があるわけでもない。

そんな市場に積極的に進出する企業はあるのだろうか。

そもそもそこに政府がお金をかける意味があるのだろうか。

市場の拡大=戦争発生という防衛産業において、積極的になれる日本人は少ないであろう。

 

曖昧さを放置することで駄目になる

「政権の都合で拡大解釈される余地を残したままだ」

輸出の審査規定においても、曖昧な文言にとどまっているのが現状である。

明確なライン、国民が納得できるラインがなければやるべきではないだろうし、

そもそも企業がそれで参加するのも不自然だ。

曖昧さを残すことで抜け道をつくる。

それが正しい分野もあるだろうが、こと武器輸出においてはよろしくないだろう。

 

変化の予兆を見逃してはいけない

「国の政治に何か重大な変化や転換が起きるときは、その前兆として現れるのが、まず教育と学問への干渉と圧迫である」

防衛技術は高度な研究、科学技術と隣合わせである。

防衛省は大学、研究機関にも補助金や共同研究という形で様々な働きかけをしている。

いかに防衛から遠い技術であろうと、防衛省がお金を出して入れば、のちのちアクセスすることも可能である。

つまりは防衛関係にいくらでも利用可能な技術となってしまうわけだ。

軍学共同といった流れができつつある昨今、特に研究費に困っている研究者が多い中、そこに縋る気持ちは理解できる。

そこは研究者個人ではなく、大学、ひいては研究機関全体として、どのように取り組むか。

日本としてどのような国になっていくのかを考えながら行動せねばならない。

 

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