aichikenminの書斎

20代サラリーマンが、読んだ本と、心に残った言葉、その時考えたことを徒然なるままに書き留めたもの(金融、理系、工学、航空機、読書)

【読書】横浜駅SF/柞刈湯葉 横浜駅は常に工事が行われている状態こそが完成形なのだ

改築工事を繰り返す横浜駅横浜駅が自己増殖を開始し、それから数百年後の世界。

横浜駅SF (カドカワBOOKS)

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¥1,296から

日本の本州は99%が横浜駅となった。
その中でJR北日本そしてJR福岡の二社が防衛戦を続けていた。
そんな世界のお話である。
脳に埋め込まれたsuicaで人間が管理されるエキナカ社会。
その外側で暮らす非スイカの住民ヒロト18きっぷを託された。
それを使って横浜駅の中に入り込むことができた。
横浜駅には何があるのか。
知らず知らずのうちに彼は人類の未来を担うことになってしまう。
 

 

非常にキャッチーなタイトルだと思う。
そしてそれにまんまと乗せられて買ってしまったのが私。
題材はすごく現実的なものである。
ただしそれが想像できないほど非現実に近づいていく。
支配された社会と、それに立ち向かう人々、それに迎合をしてしまった人々。
不思議なもので、この設定がすっと入ってくるのはなぜだろう。
なんとなく駅という空間に対し、人を飲み込む恐ろしさというものを感じているからなのだろうか。
人が駅を作っているのか駅が人を作っているのか。
だんだんわからなくなってきたり。
とりあえず言えるのは満員電車は嫌いです。
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【読書】Φは壊れたね/森博嗣 真実とは、決して完全に目の前に姿を現すことはないのだから

「自分が掴んだと思える真実とは自分が作り上げた都合のよい真実である」

φは壊れたね (講談社文庫)

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¥637から

森博嗣のGシリーズ。
その死体は、密室の中でY字の形につられていた。
背中に作り物の翼をつけ、胸には銀色のナイフが刺さっていた。
死体発見の一部始終がビデオに録画されていた。
まるで一つの作品であるかのように。
そしてそのビデオのタイトルにはこう記されていた。
 

 

西之園萌絵、山吹ら学生達と事件の解明に挑む。
本作はS&Mシリーズの主人公である西之園そして犀川も登場する。
彼らがまたも活躍するこのシリーズ。
いつにもまして密室が不気味である。
密室というのは人間の先入観と没入感が作り出す仕組みである。
それを作るのも解くのも人間なのだ。
そもそもが密室で殺人すること自体が不可思議なのだ。
なぜなら密室で人が死ぬのは自殺しかないのだから。
それ以上はただの顕示欲に過ぎないのだから。
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【読書】リバース/湊かなえ 昔の事件が蘇る、そして浮かび上がる真実

暗い、重い、だけど癖になる

リバース (講談社文庫)

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藤原竜也主演で連続ドラマ化された本作。
読後に嫌な気持ちになるというミステリーの名手、通称イヤミスの女王。
本作の主人公は平凡なサラリーマン深瀬。
彼は自宅の近所にあるコーヒー店に通うことが唯一の楽しみだ。
そこで美穂子との出会いを経て彼の人生は輝き始める。
そんなある日、彼女の元に一通の手紙が届いた。
「深瀬は人殺しである。」

 

果たしてこの文面は何を意味するのか。
彼の過去に遡るリバースが始まるのだ。
彼が美穂子に打ち明ける真実。
そして、その裏に隠された本当の出来事が今明らかにされる。
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