【読書】鳥人計画/東野圭吾 スポーツ科学を題材にした犯人の探偵当てミステリー
犯人が探偵を当てるミステリー
スキージャンプ界のエースが毒殺される事件が発生。
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そして犯人は、序盤で明らかになる。
だが、警察は全く犯人の目星をつけることができない。
この話が面白いのはここから。
しばらくして、警察に密告状が届く。
そこには犯人の名前が。
犯人は逮捕され、留置場の中で推理する。
誰が気づいたのか、誰が探偵なのか。
探偵が犯人を追い詰めるというストーリーとは全く違う視点からの展開。
新鮮で、かつ犯人の焦りも伝わってくる。
ただ、この話はこれで終わらない。
事件の背後には、タイトルに冠する鳥人計画が存在する。
ミステリーだけではない、科学とスポーツの間に問題を投げかける作品でもある。
スポーツはどこまで科学に頼るべきなのか
「科学力を駆使した勝利よりも、人間らしさを追究した敗北のほうが価値があるとおっしゃるのですか」
スポーツ界における科学の台頭。
昔はスポーツといえば精神論、今はスポーツといえば科学と合理性。
それほどまでに変わってきた。
いかに効率に良いトレーニングをするか、最適なフォームに近づけるか。
フォームを分析し、改良する、アドバイスを得る。
そういったツールとしての使い方。
本作では、これらより行き過ぎた科学による強化が行われている。
スポーツが本質か、科学が本質か。
どちらが主なのかを見失うことが、いかに恐ろしいかを伝えてくれる。
「人間って弱いからね」
終盤で、科学に使われ過ぎないで人間らしく飛んで欲しいと言われたジャンプ選手が残したセリフ。
自分の思いだけ突き進む、進み続けることは難しい。
進むために、杖に縋る必要も出てくる。
だが、その杖に縋り過ぎて、目的外の方向に引っ張られることはあってはならない。
あくまで補助ツールであることを理解しながら。
いかに進んだ科学技術でも、それを使う人間が、使われてはならない。
人間と科学技術の間の関わり方において、最重要な事項である。
目的とプロセスの明確化
「とにかく手探りで自らのジャンプを高めようとしている自分に比べて、彼ははっきりとした何かに向かって、確実に階段を上がっているように思えた」
ライバルが成長していくことに対する焦り、自分との違いに気づく。
遠い目標を目指しているときは、進んでいるのか不安になる。
小さな目標を段階的にこなしていくことが継続性の根本になる。
小さな達成感と次なる小目標の設定という循環のスタイル。
大きな目標を小さな目標に小分けすることが難しいのだ。
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