【読書】SOSの猿/伊坂幸太郎 悪魔祓いをしたら孫悟空が出てきたのだが
現実世界に、孫悟空
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300億円の損害を出した株の誤発注事件。
それを調べるように言われた男。
そして引きこもりを悪魔祓いで治そうとする男。
彼ら二人の物語と言いたいところだが、実は主役がもう一人。
それは孫悟空だ。
彼が登場する本作品は、現実世界に孫悟空という極めて空想の香りが漂う登場人物が混じっている。
一言で言うと不思議な世界。
だが伊坂幸太郎の手にかかれば、それは当たり前のように書かれてしまう。
そこに孫悟空がいる不自然さなどほとんどない。
彼らが織りなす物語は、世界を平和にするのか楽しくするのか。
本当に悪いのは誰だろう、誰かを救いたいという思いが人を動かす。
その美しさを見せてくれる1冊だ。
理解の範疇を超えることに対する恐れ
「こんな恐ろしい言動をする彼女に悪魔がついていなかったらそのことの方が恐ろしい」
恐ろしい言動をする彼女に悪魔がついていなかったら、そのことの方が恐ろしい。
悪魔祓いを学んだ主人公、学ぶ過程で一番印象に残っているのがこの言葉。
悪魔がついているからこそ恐ろしいのではなく、悪魔がついていないのにも関わらず、このようなことをするそんな人間がいるということに対しての恐怖。
それが前面に立っているのだ。
人間のせいではなく悪魔のせいにすることができる。
その免罪符を求めているのだ。
期待ゆえの落胆、それを回避するには
「落胆は期待しているからこそ生じる」
あらかじめ期待していなければ残念がることもない。
そうだよねと思うだけだから。
人は裏切られたくないという思いのもと、人に期待をしない。
自分の身を守るために、自分の精神の安定のために、人に期待をしないという選択肢を取るのだ。
その結果生まれる世界というのは非常に暗く陰鬱なものになるだろうが。
「 自転車で観光名所を効率よくスムーズに回るのがエンターテインメント、自転車や徒歩でゆっくり景色を味わうのが純文学ではないか」
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