【読書】空飛ぶ広報室/有川浩 飛行機に乗れなくても空は飛べる
今度の舞台は航空自衛隊の広報室
![]() |
新品価格 |
自衛隊三部作とも言われる自衛隊小説の次は、主役が少し変わった職業に。
最前線で活躍する自衛官ではなく、広報担当である。
主人公の空井は、元パイロット。
幼いころからの夢であるブルーインパルスへの内命が出た直後、
交通事故に巻き込まれ、パイロットを辞めざるを得なくなった。
ずっと憧れていたブルーに手が届いたはずだった空井。
絶望の淵を歩みながら、辿り着いた先は広報室。
自衛官の仕事はどういうものか、理解してもらうために広報を行なう。
間違った理解をされないように、自衛官だって人間だと気づいてもらうために。
非常に馴染みの薄い職業の焦点をあてた、かつ一人の人間が立ち直っていく姿を見る。そんな一冊。
自衛隊は専守防衛
「俺らの信条は専守防衛だからな」
売り言葉を買って怒鳴るった空井への一言。
怒鳴るということは攻撃するということ。
相手と同じ土俵煮立つ必要はなく、そして冷静さを失ってはならない。
人と人とのつながりというものは非常に難しく、壊れやすいものだ。
そんな関係性を守るためにも、専守防衛という自衛隊のスタンスを忘れてはならない。
何のために仕事をしていますか
「心意気で仕事ができる自分がかっこいいと越に入れるのは、実は相当かっこいいことではないだろうか」
何のために仕事をしているのかと問われた時、なんと答えるだろうか。
お金?みんなが働いているから?周りからの目?
そんなことじゃなく、自分が働きたいから働いている。
そう答える人はどれだけいるのだろうか。
せっかく自分の人生の中の貴重な時間を使うわけだから、そこに意味を持ちたい。
だから辞める人や転職する人が多くなるのはいいことだと思う。
真剣に考えているからこそ、そういう選択を取るわけだから。
「俺はここにいる間にこれだという仕事を遺せるのかな」
自衛官はおなじところに3年はいられない。
その間に自分に何ができるのか。
時間という概念をちゃんと意識できているのだろうか。
組織の失敗を認識しているか
「女を捨てなきゃ務まらないと見切られちゃったんじゃ、組織としてはちょっと情けないよね。上官としては悔しいものがあるよ」
自分が女だから、そんな扱いをされてトラウマになった自衛官。
女として扱われることが嫌だから、そういう振る舞いをするようになった。
部下の振る舞いは組織や上司の影響による。
逆に言えば組織を見限ったからこそ、そんな振る舞いになるのだ。
組織を運営する側の人間は、果たしてそれをわかっているのだろうか。
例えば、制度が形骸化していることをどう思っているのだろうか。
広報という仕事
「飛行機って飛んでいくイメージが強いから、よそを攻撃する連想につながって細かいことを言われやすいんだよ」
世間が持つイメージは多くの場合、マスメディアを通したものだ。
彼らがどのように報道するかによって、正反対になることも多い。
思いはそれぞれあるのだろうが、報道する側はメディアがもつ力を理解して行動するべきだ。
これはどの会社においても一緒だろう。
自分自身がではなく、その会社がどのような力を持っているのかわかったうえでの行動をしなければならない。
「元々受け入れてくれる人を相手に飛ばしてるだけじゃ認知は広まっていかないんです」
ブルーインパルスの飛行についての発言。
広報という仕事は知らない人に知ってもらうための仕事。
既知の枠から脱却するのは困難だし、難易度も格段に上昇する。
知らない人にどう伝えるか。
いかに正しく理解してもらうか。
批判されやすい職業だからこそ、気を使わなければならない。
国民のためにやっていることなのに、その国民たちから刺されることに怯えるのは悲しい。
関連記事
aichikenmin-aichi.hatenablog.com