【読書】死亡推定時刻/朔立木 人々の思いが事実を捻じ曲げてしまう冤罪小説
事実を捻じ曲げてしまう冤罪小説
スリリングな冤罪小説、作者は法律家。
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読み始めると止まらない。
そして人々の思いが、事実を捻じ曲げてしまう恐ろしさを感じる。
自分に正直にあろうとする人であってもそれに加担してしまうこともあるのだという恐ろしさ。
禍福はあざなえる縄の如し。
冤罪というものは、悪意やミスだけでなく、善意など様々なものがよりあって生まれるものであるという終盤での一節が印象的。
弁護士と検事、そして冤罪に巻き込まれる被害者。
一度刷り込まれたイメージというものは、払拭することが非常に困難。
ニュースで冤罪事件とか見る時に、これからはもっと注目するだろう。
間違っているとわかっていても推し進めるような、巨大な力。
人の顔が見えない組織というものは、立ち向かう先もよくわからなくなってしまう。
「はじめにそれを読んでしまうと、どうしてもその見方に影響を受ける」
先入観というものは、どんな場面にも入ってくる。
同じ言葉や意見を言ったとしても人によって印象が変わる。
フラットな状態でいることって難しい。
「優秀な警察官。しかしその優秀さは組織を守るために捧げられている」
何のために働くのか。
いつの間にか目的が変わってしまっていたり、当初のものからずれていたりする。
そんなときにちゃんと立ち止まれる人間になれるだろうか。
目的を見失わないことと、客観的に自分を見つめること。
言葉にすることは簡単、だけれども行動に移すことはハードルが高い。
無意識のうちに組織に染まってしまわないことが求められる。
「ちゃんとした理屈もなしに、人を殺したり、人生を奪ったりできるのか!」
理不尽さに対する言葉。
筆者の強い思いが感じられる。