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【読書】ON 猟奇犯罪捜査班 藤堂比奈子/内藤了 善光寺名物八幡屋礒五郎の七味唐からしです

ドラマの原作となっている本作

ON 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子 (角川ホラー文庫)

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主人公の藤堂比奈子は波留が演じている。

www.ktv.jp

本作は角川ホラー文庫から出されており、ジャンルとしてはホラーと言われる。

だが、内容的にはサスペンス、ミステリー、そしてSFの中間ぐらいのイメージだろうか。

ところどころ猟奇的な描写が描かれているが、ストーリー全体としてもミステリーとして十二分に楽しめるものだ。

逆に、ホラーカテゴリに含まれることで読者を多少失ってしまってはいないだろうかと心配になるほど。

 

主人公の藤堂比奈子は、若手の女性刑事。

特技は抜群の記憶力。

未解決事件のデータをひたすら暗記しており、人間コンピュータと揶揄されることも。

何にでも唐辛子をかけて食べるという独特な味覚も有する。

 

彼女が所属する警察署の管轄内で奇妙な自死事件が相次いでいた。

奇妙なのはその方法。

壁に頭をぶつけたりといった通常ではあり得ない形での自死

しかもその方法は、かつて彼らが犯した殺人と同様の手口で命を絶っていた。

 

自殺する過程が映像で残っているものもあった。

もちろん誰かが自殺に見せかけて殺害しているわけではない。

触らずに、遠隔操作で殺しているのだろうか。

そうだとしたら犯人の目的とは一体なんだろうか。

 

近未来の、あり得るのではなかろうかと思わせる殺害方法と動機。

単純なホラーを超えた、メッセージが描かれている。

人間の悪意が蔓延している現場 

「初めて目にした遺体発見現場には、何か言いようのない悪意がわだかまっており、それが比奈子を憔悴させていたのだった」

主人公の比奈子は主に内勤を命じられていた。

今回の事件で初めて刑事として外回りの捜査を行なうこととなった。

それまで、報告書やデータで現場の写真は見慣れていたはずだった。

だが、実際立ちあってみるとそこにあるものは遺体だけではない。

犯人の悪意が詰まっていた。

犯罪は、動機があって初めて起こるもの。

彼女はその動機を肌で感じることとなった。

 

 

人間は人との関わりのうちに形成される

「人は成長して、色々な人と関わって、様々に学び、様々に変わる」

生い立ちによって犯罪者になるという発言に対して心理カウンセラーが反論する。

幼いころにすべてが決まるわけではない。

生い立ちにおいては、保護者の責任であり、本人にすべてを決める権利はない。

むしろその後の人との触れ合いによって変化していくのだ。

人格の形成はそうそう単純ではない。

 

超常現象よりも恐ろしいのは人間

「あの人たちをあんな姿にしたのは幽霊じゃなくて人間だからね」

超常現象は怖くないと検死医はいう。

彼女が恐いのは幽霊ではなく、悪意をもって殺害を行った人間だと。

この小説のホラー要素は、超常現象ではなく、人間の恐ろしさをまざまざと見せてくる。

本当に恐ろしいのは目に見えない人間の悪意であると。

 

後から振り返ると大したことではなかったりする

「人生ってね、生きてさえいれば、どんなことでも、大したものじゃなくなるものよ」

比奈子の死んだ母親の言葉。

生きる上で辛いこと、それはいずれ時間が解決してくれる。

生きてさえいれば。

主体として苦しんでいると視野は狭くなるが、客観視することが大事なのだ。

 

何が人の心を蝕ませるのだろうか

「そこに心の欠けた者らがひそむのだろうか。それとも何万の人々も、同じ境遇にあれば心が欠けてしまうのか」

都会のビル群を見ながら比奈子は考える。

多数の人々が住んでいる場所、東京。

その中にいることで変化してしまうのだろうか。

変わってしまうのだろうか。

人の心を欠けてしまう瞬間はどのように訪れるのだろうか。

 

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