aichikenminの書斎

20代サラリーマンが、読んだ本と、心に残った言葉、その時考えたことを徒然なるままに書き留めたもの(金融、理系、工学、航空機、読書)

【読書】私に似た人/貫井徳郎 テロが日常的に起きる社会で 誰かを信じる事は出来るだろうか

幸せか不幸かなんて要は主観

私に似た人 (朝日文庫)

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小規模なテロが頻発するようになった日本。
実行犯たちは実生活では全く接点がない。
しかしながら、彼らは一様に、冷たい社会に抵抗するレジスタントと、自分のことを称していた。
この物語には10人の主人公がいる。
彼らはそれぞれテロに関わらざるを得なくなった人物である。
大切な人を失ったもの、テロを起こす犯人、警察官、テロに共感を覚えるもの、煽動しようとするもの、テロにも社会にも無関心なもの。

 

様々な人間たちが織りなし作られていく日本の姿。
現代社会と何が違うだろうか。
フィクションでありながら、なぜか身につまされる思いを感じる。
その原因はどこにあるのか。

議論で負けて暴力に逃げる、それは理不尽でテロと同じ 

「腹が立ったからと言って相手を叩いたりしたらテロと同じ」
言い様のない怒りを、言葉ではなく暴力に訴えたとき、それはテロと同じなのだ。
人は変わっていく。
子供から大人になるにつれ分別を学んでいく。
その過程で、身につけるべきものを、身につけて欲しいものだ。
 

 

画面というフィルターを通してしか、世間と関わりを持てない人間たち

「嫌なものを見てしまった。事故自体はかなり悲惨だが、それよりももっと目を背けたいものがここにある」
テロが発生した現場に居合わせた主人公。
彼女が見たのは、被害者そしてそれらを介抱する人間、さらにその外側で携帯で写真や動画を撮影するもの。
いったい彼らは何を見ているのだろうか。
なぜ手を貸さないのだろうか。
画面を通してしか、現実を直視できないのか。
 

税金は誰のものか?疑心暗鬼になっているのは政治家を信じられないから

「北欧型社会は、政治家への信頼があって初めて成立する。だから日本では難しいと思う」
北欧では、高い税金の見返りとして国民は高度な公共の福祉を得られる。
その見返りがあるからこそ、高い税金を払っているとも言える。
翻って日本は、税金を正しく使われるという所に対し猜疑心を持っている。
この差が決定的なもので はないだろうか。
 

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