aichikenminの書斎

20代サラリーマンが、読んだ本と、心に残った言葉、その時考えたことを徒然なるままに書き留めたもの(金融、理系、工学、航空機、読書)

【読書】なんとなく、クリスタル/田中康夫 時代を批判する小説

「どうして、こんなにも日本が物質的に豊かになったのに、相も変わらず、日本の小説ってのは、人生、どう生きるべきか、みたいなテーマを扱ってばかりいるのだろう」

新装版 なんとなく、クリスタル (河出文庫)

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1980年を生きる女子大生が主人公の本作。

東京でどのように生きるのか。

若者は何を考えながら生きるのか。

非常に生々しく、リアルに存在しているかのごとく読める。

 

本作の特徴は、異常なまでの脚注。

見開きページの左側は脚注、本分は右側。

そして脚注の中には、それぞれに棘があったり、重要な指摘や示唆があったりする。

それは小説の内容とは関係なく、その時代の社会に向けての痛烈な批判であったりする。

 

どちらが本文か、どちらがこの本の本質か、わからない。

どちらを読んでも優れた作品である。

 

一種のネタ的要素により売れたのかと思っていたが、そんなことはない。

重たい、重量級の内容が待っていた。

そして今の時代を生きる我々と照らし合わせると、変わった所、変わらない所、様々である。

過ぎ去った過去の時代を見ながら、何かを感じずにはいられない。

時代を批判する小説。

痛烈である。

 

形のない憧れ

「私たちって、横文字文化に弱いのだから・・・」

海外や、英語に憧れる若者たち。

それはいまも変わらない。

いや、憧れていた若者たちが今、年をとって会社のポジション的に偉くなったからだろうか。

彼らのイメージの中では、横文字文化がまだまだ蔓延っているからだろうか。

そろそろ日本語の美しさに回帰してきてもいい頃だと思うのだが。

 

「結局ね、ブランドに弱いんだよね」

これは今もそう。

自分で物の良さを判断できないから、誰かによって付けられたタグに頼ってしまう。

人を判断するときも一緒。

学歴や会社で判断する人が、残念ながらまだまだ多い。

自分は人を見る目がありませんよ、と言っていることに気づかないまま。

 

 

変わらない人の多さ

「人ばかり見ていると、たまらなくイライラしてくるのだった」

人混みばかりの東京において、イライラはつきもの。

1980年もそうだったのかと納得する一方、全く進歩していないことに驚きを感じる。

東京に人は集まってくる。

人混みが好きなわけでもないのに、集まってくる。

行列を見たら並んでしまうというような、そんな習性かもしれない。

そろそろ学ばねばならない。

日本の国土は広いのだということを再認識しなければ。

 

悟っているのは今も昔も同じか

「結局、おままごと遊びなのね、私たちの世代の恋愛って」

好きですと言い合って、おままごとをしていると、登場人物はいう。

本当に相手が好きなのか、それとも好きだと言い合っている自分が好きなのか。

たまにわからなくなってしまう。

ある種、恋愛というものが、しなくてはならない一種の義務感をも有しているかのごとく振舞っている。

知らず知らずのうちに価値観が押し付けられている。

 

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